十六章 【クエスト】星崎・今岡コラボパート
文字数 2,589文字
よくきたな、冒険者見習いたちよ。
今回貴様らには、町の南に位置する 【紅の森】。その北部につくられた【フルイ墓地】に行ってもらう
依頼人が身内だなんて……本物のお仕事かと思っていたのに、なんだか茶番っぽいですわね
依頼は依頼だ!
それで、だ。最近になって【フルイ墓地】の地下には、超古代文明の眠る【モヤーシ洞穴】の存在が明らかになった。
調査員の報告によると、この地下空間には古代のもやしに関して記載された石版【モヤシストーン】が眠っている可能性があるらしい。
そこで貴様らには、この石版を見つけ出し回収してくるという任務を与える!
うわっ!
なんか虫とかいそうな雰囲気ね……!
本当にここ入るの?
そりゃ、実習とはいえ一応クエストなんだから
入らなきゃダメだろうね。
じめじめした陰気な場所じゃっどん、
仕事なら仕様(しよ)がなかとじゃ!
そうだね。
でも、実習とはいえ一応クエストなら
報酬の話も聞いておかなくちゃね。
実習だから市価より安めになるとは思うんだけど
少なくとも駆け出し冒険者レベルぐらいの報酬は出るんだよね?
ちゃっかりしてるなぁ。
でも、冒険者なら当然といえば当然か。
あ、ちなみにもやし関連はダメですからね。
で、クエスト報酬はいかほどなんですか?
それこそ、学生である貴様らにとって最大の報酬であろう!!
仕方ない。俺が開発している最新の温泉テーマパークを無料で使えるよう手配してやろう。宿泊所や食堂もある。
そんなわけだから、とっとと行ってこい!!
一気に最下層まで落ちると、そこにはご丁寧にクッションが置かれてあった。
そして、目の前には火の灯った松明と、先の見えない薄暗い通路。松明は1人分しかないようだ。
結構な高さから落ちもしたな。
怪我ばのうて、ないよりじゃっで。
でも、この高さを昇るのはさすがに無理。
ひとまず先に進むしかなさそうね。
そうだね。
でも、松明が一本しかないのは不親切だなぁ。
しょうがない。誰が持つ?
しかし、その質問には誰も答えなかった。
松明を持つ者。
それすなわち先頭を切って進むことを意味していた。
ゆえに誰も名乗り出ようとはしなかった。
が、一同の視線は、自然、一点へと注がれていたのだった。
そうだね……。
オレしかいないよね。
男はオレとスーさんだけなわけだし、
スーさんじゃあ低すぎるから、
そうなると必然的にオレになるよね。
うん、わかってましたよ……。
するとどこからともなく長~いもやしの触手が現れ、女性陣を襲う――かに思われたが!
触手はレオナルドの身体に絡みついた!!
(魔道具カメラを連写)
(こ、これは薄い本が厚くなるってやつね……)
レオッ、大丈夫なの!?(ドキドキ)
あ、ああ、大丈夫。
こいつらじゃれてるだけだから。
じゃれてる?
うん、この前散歩中にね。
猟師の罠にかかってるのを助けたことがあるんだよ。
その恩返しにきたみたいだね。
あ、どうやらついてこいって言ってるみたいだ!
こっちだってさ!
レオ……。
とうとうよくわからない生き物とまで
コミュニケーション取るようになっちゃったのね……。
ここから先は通さないぜ?
オマエはなんのために、見習いとして学んでいる?
召喚士になって、なにをする?
私?
私の場合は親から、
「婿取りをして家を継げ。
それがいやなら冒険者にでもなって家から出て行け!」
と言われたから、迷わず後者を選んだだけね。
そんな理由でなったのかよ!
そんな理由とはなによ!
私は私の生きたいように生きる!
そのなにが悪いのよ!
いいや、よか!
まっこて、よか女子(おごじょ)じゃ!
おいはナオミさァのことば、見直しもしたぞ!
と言いたいところだが、それを見つけるのもまた学びというものだ。
いいぜ、先へ進みな
どうやら、これが目当てのモノらしい。問題は、この重そうな石版を誰が背負い、ハシゴで外へ運ぶのかということだった。
えっと……。
これどうやって運ぼうか?
またブラックのこと忘れたら、
さすがに泣くと思うよ。
さすがに今度は忘れてはいないけど、
彼はたしかひざ壊してるんじゃなかったっけ?
で、スーさんは体格上無理っぽいし、
女子連中は運びたがらないだろうし……。
これ、必然的にオレが持つしかなくない?
一同のうなずきを見て、レオは諦めて石版を担ごうと手にかけた。
しかし、それより早く石版を担ぐ者があったではないか!
それは誰あろう、先ほどの触手たちだった。
お、お前ら……!
恩返しをしてくれるのか?
もやし農家さんの名前が長々と彫られているだけですわよ!!
これは実習であると。古代のもやしについて書かれた石版など、あるわけがなかろう。
だが、喜べ。頑張った貴様らには、約束通り温泉テーマパークという報酬が待っている。
楽しみにするがいい!!
以上!! 解散!!