第43話 拡大自殺という無差別殺人

文字数 1,358文字

 先週、会社の指示で防災の動画を視聴しました。
去年あたりから、組織をあげて有事の際の態勢作りに大わらわなのです。なんというか……南海トラフ地震がいつきてもおかしくないようなムードがあります。
動画では、まだ記憶に新しい放火事件の数々が建物レイアウトとともに解説され、その犯行の手口と身勝手さに……かなり衝撃を受けました。

 特に2021年12月の「北新地ビル放火殺人事件」。

 心療内科・精神科専門のクリニック「働く人の西梅田こころとからだのクリニック」に、元患者(61歳)が放火して、自分を含む27名が死亡、負傷者1名という凄惨な無差別大量殺人事件です。
犠牲となったクリニックの西澤院長(49歳)は、800人以上の患者を抱え、仕事終わりの患者も受診できるようにと、午後10時まで対応していた先生でした。患者たちの精神的支柱となっていた先生。

 それから間もない2022年1月には、「埼玉県訪問診療医射殺事件」。
熱意と責任感のある先生が、逆恨みで巻き添えになる事件が続き、今、こう書いただけでまた憤りが蘇ります。


 衝撃を覚えた犯行の手口というのは、以下の通り。
犯人は「京都アニメーション放火殺人事件」とその模倣である徳島県雑居ビル放火未遂事件を参考に、周到に下調べして犯行を準備

・事前にクリニックの防火扉と消火栓に細工をして開きにくくしていた
・逃げようとした人に対し、体当たりして邪魔をした。(防犯カメラに映像が残っている
・催涙スプレーや刃物を所持。

 待合室に居た2名だけは、犯行を目撃し、一目散に逃げて助かりました。


 タイトルの「拡大自殺」とは、「自殺願望がある人が、他人を巻き込んで無理心中を図る行為」を指します。
大阪府警は、「犯人が孤立と困窮から自暴自棄になり、通っていたクリニックの他の患者らに一方的に劣等感を募らせ、大勢を巻き込む「拡大自殺」に及んだ」と結論付けました。

 わかりやすく陳腐な物語に落とし込まれても、同情の余地は一切ありませんし、他人を巻き添えにしようとする思考回路とその執念は、人ならざるもののようです。
憤りしか感じない事件でしたが、今年に入ってからの記事を見つけました。

 死亡により不起訴となった谷本容疑者の遺骨は、令和5年8月末までに親族からの引き取り手がなければ、大阪市設南霊園に無縁仏として埋葬されることになっていました。
が、1月にメダデ教会(大阪・西成区)の西田好子牧師(72歳)が引き取りを申し出たのです。
メダデ教会は、前科のある人の更生や、野宿者の生活立て直しに取り組んでいる教会です。

 西田牧師は、
「もし事件前に出会って手を差し伸べていたら、救えたかもしれないという後悔がある」
「遺骨は教会に安置し、被害者に謝罪するよう、毎日声をかけたい
 と、話しています。

 西田牧師は、五十過ぎに先生から転身し牧師となった方。説教はたびたび脱線し、最後は絶叫となる熱い方らしいです。
 西田牧師、お願いいたします。



【おまけ】防災動画で学んだこと
 火災によって亡くなられた方のほとんどは、一酸化炭素中毒(煙)によるもの。
一酸化炭素は軽いため上へのぼる。逃げるときは上へ逃げないこと。
(できれば濡らした)タオルやハンカチで鼻と口を覆い、低い姿勢で這うように床近くの空気を吸いながら移動すること。


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