第27話 アジサイ、野ばら、蛇苺

文字数 552文字

 紋切り口調な文章に、小さじ半分の彩りを添えるため、植物の画像を添付している。
手紙に入れるポストカードのように。

 ポストカードを集めるため、会社帰りの道端、川沿い、駐車場、足を止め風景を拝借。
6月、7月は、アジサイが様々な顔を見せてくれた。
ふくふくと柔らかな白、雨に濡れ清々しい青、艶やかなこっくりとした紫。

 (わず)かに色褪せた(たたず)まいも、物憂げな(おもむき)をまとっていて。






 それから、誰も見ないような場所で花に出会うと、やはり立ち止まってしまう。
そう、昔からそうだ、私が見ていようが見ていまいが、私の心が弾んでいようが沈んでいようが、世界はお構いなしに美しい。






 ふと小学校の頃を思い出す。
記憶の中ではいつも雨だから、やはり今頃の季節だったか。
私はいつも学校帰りに寄り道して、雑草の原っぱに分け入った。

 何十年経った今でも、やっていることはその頃とそう変わらないのだ。

 原っぱに行く目的は、蛇苺を確認するためだった。
食べてみよう。いつがいいかな。もう少しふくらんでから。
私は蛇苺を食べる頃合いを見計らっていた。

 ある日、原っぱに鉄骨が積まれていた。
食べるなら今日だ。
酸っぱいのではないかと心して食べた蛇苺は、拍子抜けするほど、すかすかな味だった。

 蛇苺の原っぱには男の人達が出入りするようになり、プレハブが建てられた。





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