第14話 ロボット研究部の恋愛事情

文字数 1,751文字

 ここのところ、毎日放課後は全員部室に集まっている。吹奏楽部との兼部である、サヤカでさえもニコニコ顔で、毎日やってくるのが、少々不気味なのだった。

「サヤカ、ちょっと来て」

リコは、サヤカを廊下に呼び出す。

「アンタ、なんか企んでるでしょう」

「リコ、酷い!そんな言い方。でも、リコには隠せないか」

「やっぱり。白状しなさい」

するとサヤカがモジモジし始めた。

「オサム君って、素敵ね!」

「そういうことなの。アンタ、彼氏いたよね?」

「もうとっくに別れたわよ。それはそうと、アサミはリコに夢中みたいだけど?」

「あれは、単にラボの装置や、発明品に興味があるだけよ」

「じゃあ、リコは好きな人はいないのね?」

すると今度は、リコがモジモジし始める。

「シンジ君って、私たちが知ってる、マコト君に雰囲気が似ているのよ」

リコは、初恋の相手とシンジを重ね合わせていたのだ。

「でも、シンジ君はアサミにぞっこんだし。だんだん、ややこしいことに、なってるけど、オサム君はどうなの?」

「それが判らないのよ。探ってみるわ」

◇◇◇◇◇

リコは、ロボット犬ミクと帰宅し、ラボでくつろいでいる。

「リコ、明日も学校に連れて行ってね」

「いいけど。どうして?」

すると、ミクがモジモジし始める。

「オサムから、こんな手紙をもらったんだ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ミクへ」
俺はお前が好きだ。ずっと一緒にいたいから俺の家に来てくれ。リコには、俺から話す。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ひょーーー!!」 リコびっくり仰天。

「それで、ミクの気持はどうなの」

「リコ、嫌だな。僕は、最初からリコ一筋にプログラミングされてるんだよ」

「ごめんごめん」

「でも、オサムが望んでいるから、学校に連れて行って」

「判った」

(ずいぶんと、ややこしいことになってるワ。それに、相思相愛がいないじゃない)

ロボット研究所 恋愛相関
リコ→シンジ
シンジ→アサミ
アサミ→リコ
サヤカ→オサム
オサム→ミク
ミク→リコ
サヤカのワンコ→ミク

◇◇◇◇

 M高校ロボット研究部は、発足早々危機に陥っていた。各々のメンバーが、自分の恋愛を成就させようと精を出し、研究部本来の活動があきらかに停滞している。

「はいはい、みんな、注目!」

 リコが黒板に、ロボット研究部恋愛相関図を貼りだした。

「おおーーー!」

「このままでは、秋のロボットコンテストに間に合わないわ。そこで、この部の掟をつくることを提案します」

「まさか、アイドルグループみたいに、恋愛禁止にするの?」

 さやかの心配に対して、例の相関図いっぱいのハートマークを描いて、宣言した。

「ロボット研究部の全関係をラブラブ状態にします!」

「じゃあ、俺、リコ・サヤカ・アサミとキッスもできるの?」

 舌なめずりするオサムの仕草に、シンジが激高した。

「アサミさんの、ファーストキスは譲れない!」

 男子2人の間にリコが割って入る。

「まあまあ、落ち着こう。ロボットコンテストで全国制覇するまでは、ボディータッチは一切禁止とします」

「ワン!」 サヤカのワンコが吠える。
 
 ミクが翻訳して代弁する。

「僕のペロペロは、誰にしてもいいよね?」

「いいわ」 苦笑しながらリコ。

 すると、サヤカのワンコは、アサミの膝の上に乗っかった。

「ペロペロ」

「あはは、くすぐったい。こら、やめて」

 アサミは、サヤカのワンコのペロぺロ攻撃を受けて、いつもは見せたことのない笑顔で、じゃれ合った。その笑顔は天使のように光輝いており、他のメンバーは、呆気にとられて見とれる。

「アサミがこんなにいけてるとは……」

 いつもは悪態をつくオサムも放心状態となった。

「おいっ、シンジ、しっかりしろ!」

 元からアサミにぞっこんのシンジは、あまりの美しさに、失神してしまったところを、オサムに頬をビンタされて我に返った。そして、自分がみんなに注目されていることに、気が付いたアサミの顔が真っ赤に染まった。

「イヤだっ」

「ぎゃおん」

 アサミはサヤカのワンコを放り出して、脱兎のごとく部屋を飛び出していった。

「リコ、この部活アサミを女神様にした新興宗教にしたらどうだろう。がっぽり儲かりそうだぜ」

 オサムの提案を一笑に付せないリコであった。

(1000年の1人という女優より、アサミのほうが断然綺麗だわ)
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