第10話 リコ、高校の入学式

文字数 1,059文字

 今日は、リコの東京都立M高校への入学式である。技術系の高専も考えたが結局さやかと同じ、一般の高校にした。この高校は制服がないので、リコはシンプルなスカートにブレザーと地味なかっこうだが、さやかは黒いレザーの上下に黒いブーツと、初日から攻めたスタイルで、同級生の視線を集めていた。入学式が終わりクラス分けが発表され、新入生は各クラスの教室に入っていった。

「リコ! おんなじクラスだよ!」

「サヤカ、またアンタと一緒なのか…………」

 言葉とは裏腹に、リコの表情は明るかった。
 父母が教室の後ろで見守る中、生徒が1人1人自己紹介した。
 さやかの番である。

「アタイの名前はサヤカ。人呼んで、マルチマレットのサヤカでござんす。以後、お見知りおきを」

 ティンパニのマレットを両手に2本づつ持っての、芝居がかった意味不明の自己紹介に、クラス一同ポカンとしていた。それでも、拍手。
 次はリコである。
 リケジョのリコは、知る人ぞ知る存在だったので、「あれが、あのリケジョのリコよ」とコソコソ話す人もいた。

「リコです。科学が大好きなんです。よろしくね!」

 シンプルな挨拶に、一同拍手。

「キャー この人なに? 不審者よ!」

 父母の1人が、そう叫び教室内は騒然とした。
 不審者と名指しされた人物は、確かに異様な見た目である。トレンチコートにサングラス、簡単に言うと、ゴルゴ13のような恰好なのだが、よく見ると顔はへのへのもへじを書いたお面である。

「すみません。お面を取ってください」

 担任の教諭が恐る恐る言うと、その人物は頷いてお面に手を掛けた。

「キャー」

 そこに現れたのは、メタリックな犬の顔である。

「ミクちゃん もう限界」

 すると、その人物は体の真ん中から折れ曲がり、2匹のワンコが飛び出してきた。

「あんたら、なにしてんの!」

 リコとサヤカは同時に声をあげた。

 ◇◇◇

 リコとサヤカは、入学1日目にして、職員室で担任と教頭先生に叱責を受けた。

「学校に、ペットを持ち込むなんて、前代未聞!」

 不審者と見られたのは、リコのラボに住んでいる、ロボット犬ミクと、さやかのワンコである。
 トレンチコートの中は、さやかのワンコが竹馬をあやつり、その竹馬の竿にミクが乗っかっていたのだ。

 サヤカは怒り心頭で、厳しく言った。

「あんた、今日の夕ご飯なし!」

「そっ、そんあぁ」

 さやかのワンコは、がっくりとして、尻尾がふにゃっとなった。

 一方、リコはミクに対して何のお咎めもない様子である。

「ミク、今度はバレないように、注意してね」

 そういって、目を細めた。
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