第15話 アサミの工場へ行こう

文字数 1,449文字

 全員ラブラブの掟にしてから、全員参加での活動がどんどん進むようになっていった。

 秋のロボットコンテスト(高校生の部)のお題は、『リアルMジンガーZ』10分の1スケール なのである。

 本体に、操舵席がドローンで飛び合体する事
 2脚歩行で、障害物を倒しながら進む事
 ロケットパンチで、的を撃ちぬく事
 この3つの条件をクリアしてのタイムトライルなのだ。

 元祖のデザインにする必要はなく、むしろ現代風のデザインが求められた。
 皆の意見を基に、シンジがデザインしていく。3つの案が出た中で、一番斬新なものが全員一致で選ばれた。

 外装フレームの中へ、それぞれのパーツが干渉することなく組み込めるかが勝負である。
 ここからは、メカニック担当、アサミが主役だ。
 いよいよロボット製作に着手するタイミングで、リコが発表する。

「次の土曜日に、アサミ家の工場を見学するよ。ものづくりの現場を見て、いいロボットを作ろう!」

 これに、アサミは大混乱。リコにすがるような視線を向けた。

「アサミ、ごめんよ。アサミのおじいさんと決めたんだ」

 他のメンバーは、天使の自宅に行けると大喜び。

 ◇◇◇◇◇

 工場の入り口で、アサミの祖父が一行を出迎えた。

「よくおいでなすった」

「よろしくお願いします」

 リコ、サヤカ、オサム、シンジ、ミク、さやかのわんこが整列して、挨拶する。

 アサミの祖父は、工場の加工機を1つ1つを丁寧に説明してくれた。

「あっ、アサミが機械を動かしてる!」 とさやか。

「いまアサミが仕上げ加工しているのは、ロケット部品じゃ。あの精度をだせるのは、世界中で、あいつとワシだけなんじゃ」

「彼女はどうして機械加工の道に進んだんですか?」 とリコ。

「それがのう、5年前に両親と3人で歩道を歩いていた時に、高齢者が運転する車がアクセルとブレーキを踏み間違えて、つっこんできて……」

 おじいさんは、言葉を詰まらせた。

「あの事故以来、アサミはショックで、他人とよう話せんようになってしもうたんじゃ。ずっと部屋でふさぎ込んでおったから、ワシが無理やり工場の仕事をさせたら、性に合ったらしく、どんどん仕事を覚えたというわけなんじゃ。でも、小学生、中学生とずっと友達がおらんかった。今日は、沢山来てくれて嬉しいよ。ありがとう」

「いいえ、とんでもないことです」 とシンジ。

「ところで、アサミの婿殿になってくれるのは、どっちかな?」

「ワン!」

 先んじて答えたのは、サヤカのワンコである。おじいさんに飛びつき、ペロペロ攻撃である。

「おお、お前が婿殿か!あっはっは」

「皆さん、昼食の準備が出来ましたよ」

 エプロン姿の中年の女性が現れた。その横には、作業着姿の小太り中年男性が並んだ。

「ご挨拶が遅くなりました。いつも娘がお世話になっております」

「えええええ!!!!! ご両親は交通事故で亡くなったんでは!」

「わしゃ、そんなことは言っておらんぞ。わっはっはっ」

「おとうさん、また私たちを殺したのね。皆さん、驚かせてごめんなさい。事故があったのは本当で、私と主人は骨折して、入院したんですよ」

 そこへ、アサミがやってきて、ご両親と祖父と一緒になった。

(アサミは、いいご家族に恵まれているのね)

 リコは、嬉しくなると同時に、今は亡き自分の父親のことを思い出して、羨ましくなった。するとそれを察したのか、ミクが傍にすり寄ってくる。

(そうね。パパの分身のミクがいるから、寂しくないわ)

「リコ、ごはんだよ!」

「はーい!」 

 涙をぬぐって仲間の元へ駆けていった。
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