第4話 リコの授業参観日

文字数 1,129文字

 リコはマコトを引き継いで学級委員長になってから、2年生、3年生と選ばれた。知らない人からは優等生に見られがちなのは、リコによるマインドコントロールであることは、まだ本人も気が付いていない。

「サヤカ、どうしたの? 元気がないわね」

 サヤカはなんでも話せるリコの一番の友達である。

「リコ、これよこれ」

 サヤカは1枚のプリントをリコに見せた。

「あっこれか! 確かに嫌ね」

 プリントは、『父親授業参観』の案内である。
 リコもサヤカも、シングルマザー家庭で、この日は母親が来ることになる。

「サヤカ、いい作戦があるよ!」

 リコがサヤカに耳打ちする。

「リコ、超いいね! 10個あげる」
 
 放課後サヤカはリコの家を訪れた。

「お部屋でゲームしてるからママは入ってこないでね!」

「わかったわ。じゃあ先にお菓子を持っていきなさい」

 母はピンときた。(またラボでなんかやるんだわ)

 しばらく経ったところで、母親はスマホでヒミツ基地の内部を見ていた。
 博士は、『ママには内緒』と言っておきながら、博士の銅像の鼻の孔にカメラが仕込んであり、見守ることができる。
 今日も、リコたちが何をしようとしているか、大体のことは判った。

(ホログラムで亡くなったお父さん達を、教室に登場させようとしているのね)

 やっぱりリコも、父親が恋しい普通の女の子であったと、不憫に思うのであった。


 父親参観日当日

「リコちゃんママ、久しぶり~」

 そう声をかけたのは、サヤカママで、着慣れないスーツが女子プロレスラーのような見事な体ではじけそうである。 

 父親参観日の出し物のメインはもちろん「私のお父さん」という作文の朗読。
 次は、サヤカの番となったそのときに、突然教室の電気が消え薄暗くなった。
 教壇上に、光るものが現れ大きくなっていく。どうやら人の形のようだ。

 リコとさやか2人での朗読が始まった。
「みなさんが見ているのはホログラムで、私達のお父さんです」

 しかしそこに現れたのは、女性警察官のサヤカママで、DJポリスでの交通整理や白バイでの先導役がカッコいい。一方市議会議員であるリコママは、議会での口角を飛ばす論戦の様子が頼もしいの一言。

「これが私達のお父さんです。どうです。カッコいいでしょう? みんなからは、『お父さんがいなくて大変ね』とよくいわれるけど、そう思ったことなんて1度もないです。お母さん、いつも1人2役ありがとう」

 教室は、拍手喝さいに包まれ、大きな体に似合わぬサヤカママの号泣に、教室内のみんなは笑顔になった。

(リコったら、いつの間にかこんなにしっかりした女の子になったの)

 リコママは、喝采を浴びながら自分にピースサインを送る娘が誇らしく、そしていとおしくてたまらず涙をぬぐった。
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