第2話 秘密基地

文字数 659文字

 病院の一室にて。
 F博士は死の床に居た。歳の離れた妻ナオミとの間には、リコという保育園に通う女の子がいる。
 リコは、パパが大好きで今日もお見舞いに来ていた。

「リコ、パパはもうすぐしたら遠くに行っちゃうんだけど、リコに預かってもらいたいものがあるんだよ」

 そう言ってF博士は真鍮でできた大きな鍵と、小さなリモコンを手渡した。

「パパ、なんなのこれ?」

「リコ、よくお聞き。この鍵は離れの地下にある、ヒミツ基地の入り口のものだ。リモコンは、その部屋でのリコのお友達を動かすものだ。この話はママには絶対内緒だよ」

「やったぁ、ヒミツ基地!」

 パパが旅立ってから1ケ月後の新月の夜、リコは夜中にベッドを抜け出しヒミツ基地へ向かった。
 中に入ってびっくり。F博士が使っていた実験道具が所狭しと置かれていた。どれもとても価値のあるものだが、幼稚園児のリコに使えるしろものではない。

「そうだ。リモコンをつけよう」

「ワン!」

 リコがスイッチを入れると、1匹のロボット犬が現れてひと鳴きした。

「リコちゃん、ようやく来てくれたのね。ワタシはミク。ここにあるものの事はなんでも聞いて」

「ミクちゃん、はじめまして。ヨロシクね」

 リコは、さっそく部屋の中をミクに案内してもらった。部屋の隅に、銅像を見つけその顔に懐中電灯の光を当てた。

「キャー」

 リコは、銅像がいまにも自分に襲ってきそうで怖くなったのだ。

「リコちゃん。大丈夫だよ。お顔をよく見て」

「あっ、パパの顔だわ!」

 その時リコが見たF博士の銅像の顔は、さっきよりやや微笑んでいるように見えた。
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