第4話
文字数 1,144文字
妹の手を引いて、私はひたすらに走る。妹は半分引きずられるような状態となっているが、構う余裕はない。蜂人は空を飛べるため速い。距離のアドバンテージはいくら速く走ったところで縮まる一方だ。
「おねえちゃん、痛い」
「ラミー急いで!」
妹へ悲鳴のような声をあげる。声を荒げたところで彼女の足が速くなるわけではない。だが、この切羽詰まった状況でそれすらもよくわからなくなっている。
ダメだ。もう、追いつかれる。
すぐそこに蜂人の針が迫っている。あの針は刺されればまず死ぬだろう。仮に外傷による死を免れたとしても、毒により生存の確率は極めて低い。
助からない……!
それに、逃げてどうするんだ。自分たちにはもう生きる術がない。両親が事故で他界し、私たちだけでは自活できない。一番上の姉が何とか日銭を稼ごうとしているが、どう考えてもじり貧であろう。だから、わざわざ危険な虫人領に入って、高値で取引されている薬草を採取しようと思ったが、虫人に見つかってしまった。
もう自分たちの命運は尽きてしまったんだろうか……。
だが、丘を一つ越えたところで、不思議なものを見つける。
人だ。ここは虫人の領土。でも、どう見ても虫人ではない。と言うよりも、種族がパッと見ただけではわからない。自分たちを助けてくれるかも当然わからない。
しかし、彼女はどこかすがりたかったのだろう。このままではどうせ助からない身だ。一縷の望みに懸けて、もしかしたら、という思いを信じたくなってしまった。
その人へ助けを求めながら、叫び声をあげて走り抜ける。
蜂人の羽音が耳元まで迫っている。振り返ればもうそこにいそうだ。
妹がもはやうまく走れていないのか、かなり重い。それでも手を無理矢理引き、人生でこれほど速く走ったのは初めてではないかという速さで駆け抜ける。
液体が飛んでくる。血だろうか? もしかしたら自分か妹が傷を負ったのかもしれない。でも今はまだ足が動いている。これを止めたら死が待っているのは確実だ。
彼女は足の動きを止めず、むしろより力を込めて地を蹴る。
あの人のところにまで行ければ、また、姉妹で元通りの生活が――。
「助けて下さい! お願いします!」
足を必死に動かす。もう少し、もう少しなんだ。
彼もこちらを助ける素振りを見せてくれている。彼のところにさえたどり着ければきっと助けてくれるに違いない。
彼の周囲に青白い光の玉を複数が出現する。
見たこともない光景だ。噂に聞く魔法と言う奴ではないだろうか。この人がきっと光の玉を生成させたのだろう。
すごい。
蜂人は脅威だ。でも、この人ならきっと私たちを難なく助けてくれる気がする。
そうだ、彼のところにさえ、たどり着ければ。
そして、彼の周囲を飛ぶ光の玉が飛来してきた。
「おねえちゃん、痛い」
「ラミー急いで!」
妹へ悲鳴のような声をあげる。声を荒げたところで彼女の足が速くなるわけではない。だが、この切羽詰まった状況でそれすらもよくわからなくなっている。
ダメだ。もう、追いつかれる。
すぐそこに蜂人の針が迫っている。あの針は刺されればまず死ぬだろう。仮に外傷による死を免れたとしても、毒により生存の確率は極めて低い。
助からない……!
それに、逃げてどうするんだ。自分たちにはもう生きる術がない。両親が事故で他界し、私たちだけでは自活できない。一番上の姉が何とか日銭を稼ごうとしているが、どう考えてもじり貧であろう。だから、わざわざ危険な虫人領に入って、高値で取引されている薬草を採取しようと思ったが、虫人に見つかってしまった。
もう自分たちの命運は尽きてしまったんだろうか……。
だが、丘を一つ越えたところで、不思議なものを見つける。
人だ。ここは虫人の領土。でも、どう見ても虫人ではない。と言うよりも、種族がパッと見ただけではわからない。自分たちを助けてくれるかも当然わからない。
しかし、彼女はどこかすがりたかったのだろう。このままではどうせ助からない身だ。一縷の望みに懸けて、もしかしたら、という思いを信じたくなってしまった。
その人へ助けを求めながら、叫び声をあげて走り抜ける。
蜂人の羽音が耳元まで迫っている。振り返ればもうそこにいそうだ。
妹がもはやうまく走れていないのか、かなり重い。それでも手を無理矢理引き、人生でこれほど速く走ったのは初めてではないかという速さで駆け抜ける。
液体が飛んでくる。血だろうか? もしかしたら自分か妹が傷を負ったのかもしれない。でも今はまだ足が動いている。これを止めたら死が待っているのは確実だ。
彼女は足の動きを止めず、むしろより力を込めて地を蹴る。
あの人のところにまで行ければ、また、姉妹で元通りの生活が――。
「助けて下さい! お願いします!」
足を必死に動かす。もう少し、もう少しなんだ。
彼もこちらを助ける素振りを見せてくれている。彼のところにさえたどり着ければきっと助けてくれるに違いない。
彼の周囲に青白い光の玉を複数が出現する。
見たこともない光景だ。噂に聞く魔法と言う奴ではないだろうか。この人がきっと光の玉を生成させたのだろう。
すごい。
蜂人は脅威だ。でも、この人ならきっと私たちを難なく助けてくれる気がする。
そうだ、彼のところにさえ、たどり着ければ。
そして、彼の周囲を飛ぶ光の玉が飛来してきた。