真相(1)
文字数 979文字
長谷川刑事は公民館に現れると、皆の前に立ち、長卓袱台を囲んで座っていた十数人の村人と僕に向かって、この不思議な事件の真相を語り始めた。
「皆さん、お忙しい中、お集まり頂き、ありがとうございます……。では、これから、この事件の真相を、皆さまにご説明しようかと思います」
村人のお稙さんが、長谷川刑事の言葉に納得が行かなかったらしく、不満そうに立ち上がった。
「事件って、錯乱した女子大生が、誤って崖から落っこちたっちゅう、ありゃ、単なる事故じゃろうが!」
「いいえ、違います……。これは事故ではありません……。ある人物によって、周到に計画されたものなのです……」
「そんな訳ないだろう! 現に警察の捜査員だって、あんた以外、もう、皆引き上げたでないか?!」
「それは、私がそう指図したからです」
「これは計画的なものだと云うのですか?」
僕は思わず長谷川刑事に訊ねた。
「ええ……。橿原君、君は『彼女はこんな所から落ちた位で死ぬ訳ない』って言ってましたよね。そうです、彼女は崖から落ちて死んだりなど、していませんよ……」
「じゃ、先輩は殺された……。これは、殺人だったって言うんですか?」
長谷川刑事はそれには答えず、口元に笑みを浮かべて話を切り替えた。
「でも、その前に『のっぺらぼう』の真相について、ご説明しておきましょうか……」
今度は今井巡査が抗議の声を上げる。
「『のっぺらぼう』なんて出鱈目です。そんなの目の錯覚じゃないですか? 止めてください! そんな噂無くたって、限界集落の蛭原村には誰も来ないんですよ! そんな話が広まったら、いよいよ誰も、この村に近寄らなくなってしまいます!!」
「誰も近寄らなくなる? 違いますよね? 『怖いもの見たさに、人が集まって来てしまう……』でしょう? 今井巡査……」
今井巡査はそう言われると、そのまま口を噤んでしまった。
だが、どう云うことなんだろうか……?
「橿原君、君はシミュラクラ現象って、知っているかしら?」
「それ位知ってますよ。これでもミステリー愛好会の会員ですからね……。
シミュラクラ現象ってのは、ピースマークみたいに逆三角の点々があると、人間は、それだけで人の顔を連想してしまうと云うものです。このシミュラクラ現象とパレイドリア現象で、心霊写真など、心霊現象の殆ど全てが説明出来ると云われています……。それが何か?」
「皆さん、お忙しい中、お集まり頂き、ありがとうございます……。では、これから、この事件の真相を、皆さまにご説明しようかと思います」
村人のお稙さんが、長谷川刑事の言葉に納得が行かなかったらしく、不満そうに立ち上がった。
「事件って、錯乱した女子大生が、誤って崖から落っこちたっちゅう、ありゃ、単なる事故じゃろうが!」
「いいえ、違います……。これは事故ではありません……。ある人物によって、周到に計画されたものなのです……」
「そんな訳ないだろう! 現に警察の捜査員だって、あんた以外、もう、皆引き上げたでないか?!」
「それは、私がそう指図したからです」
「これは計画的なものだと云うのですか?」
僕は思わず長谷川刑事に訊ねた。
「ええ……。橿原君、君は『彼女はこんな所から落ちた位で死ぬ訳ない』って言ってましたよね。そうです、彼女は崖から落ちて死んだりなど、していませんよ……」
「じゃ、先輩は殺された……。これは、殺人だったって言うんですか?」
長谷川刑事はそれには答えず、口元に笑みを浮かべて話を切り替えた。
「でも、その前に『のっぺらぼう』の真相について、ご説明しておきましょうか……」
今度は今井巡査が抗議の声を上げる。
「『のっぺらぼう』なんて出鱈目です。そんなの目の錯覚じゃないですか? 止めてください! そんな噂無くたって、限界集落の蛭原村には誰も来ないんですよ! そんな話が広まったら、いよいよ誰も、この村に近寄らなくなってしまいます!!」
「誰も近寄らなくなる? 違いますよね? 『怖いもの見たさに、人が集まって来てしまう……』でしょう? 今井巡査……」
今井巡査はそう言われると、そのまま口を噤んでしまった。
だが、どう云うことなんだろうか……?
「橿原君、君はシミュラクラ現象って、知っているかしら?」
「それ位知ってますよ。これでもミステリー愛好会の会員ですからね……。
シミュラクラ現象ってのは、ピースマークみたいに逆三角の点々があると、人間は、それだけで人の顔を連想してしまうと云うものです。このシミュラクラ現象とパレイドリア現象で、心霊写真など、心霊現象の殆ど全てが説明出来ると云われています……。それが何か?」