長谷川刑事(2)
文字数 969文字
「私は長谷川露葉 、朝露の露に葉っぱの葉って書くの。神奈川県警の刑事よ」
彼女はそう自己紹介をした。だが、僕はそれに妙な違和感を感じる。
「刑事さん? どうして、まだ残っているんです? 警察の人は、みんなもう帰ったんじゃないのですか?」
彼女は顎に拳をあて、空を見上げ、暫く答えを模索している様だった。そして、決心したのか、僕に答えを伝え始めた。
「うん。君の問いは、『どうして、一緒に帰らなかったのですか?』と云う質問と『どうして、まだいるのですか?』と云う質問の両方を含んでいるわね……。実はそれぞれ微妙に答えが違うのよ」
彼女は、僕が不思議がっているのを感じたのか、その説明を続ける。
「どうして、帰らなかったかと言うと、私は彼女が事故死だと云うことに、とても疑問を持っているからよ。だから、もう少し調査したいと願ったの」
「あなたもですか? 僕も彼女が崖から落ちて死んだなんて、今でも信じられないのです……。彼女は、この程度の崖から落ちた位では死んだりしない!」
「そうよね……。身内の方やお知り合いの方は『生きているんじゃないか』って思うわよね……。でも、この高さから落ちたら、普通死ぬわよ。死んだのは別人だって思うのが、常識じゃない?」
確かに落差50メートルはある。普通の人間ならば、まず助からない。
「ま、いいわ……。でね、私が何故まだ残っているかは別の理由。君、携帯電話を持ってるかしら?」
彼女の問いに、僕はポケットからスマホを取り出した。
「それで、通話してみてくれる?」
僕は、スマホから叔母に通話をしようとした。しかしアンテナが一本も立っていない。
「無理みたいですね……。どうやらここは、圏外の様ですよ」
「そんなことは無いわ。だって昨日、彼女は私たちに緊急通話をしてきたのよ。『追われているから、助けに来て欲しい』って。だから私たちは、この蛭原村へとやって来た。
そして、彼女が電話で伝えてきた場所を捜索し、彼女の遺体を見つけたの……」
「どう云う事なんです?」
「今、ここは電波が妨害されている様なの。警察無線も使えない。勿論、それを知っているのは、私と今井巡査だけ。そして、どうやら、ここに来る道も、土砂崩れで通行出来ないみたい。だから夕方のバスも来ないわ」
「え?」
「どうやら、私たちは、この村に閉じ込められたみたいなのよ……」
彼女はそう自己紹介をした。だが、僕はそれに妙な違和感を感じる。
「刑事さん? どうして、まだ残っているんです? 警察の人は、みんなもう帰ったんじゃないのですか?」
彼女は顎に拳をあて、空を見上げ、暫く答えを模索している様だった。そして、決心したのか、僕に答えを伝え始めた。
「うん。君の問いは、『どうして、一緒に帰らなかったのですか?』と云う質問と『どうして、まだいるのですか?』と云う質問の両方を含んでいるわね……。実はそれぞれ微妙に答えが違うのよ」
彼女は、僕が不思議がっているのを感じたのか、その説明を続ける。
「どうして、帰らなかったかと言うと、私は彼女が事故死だと云うことに、とても疑問を持っているからよ。だから、もう少し調査したいと願ったの」
「あなたもですか? 僕も彼女が崖から落ちて死んだなんて、今でも信じられないのです……。彼女は、この程度の崖から落ちた位では死んだりしない!」
「そうよね……。身内の方やお知り合いの方は『生きているんじゃないか』って思うわよね……。でも、この高さから落ちたら、普通死ぬわよ。死んだのは別人だって思うのが、常識じゃない?」
確かに落差50メートルはある。普通の人間ならば、まず助からない。
「ま、いいわ……。でね、私が何故まだ残っているかは別の理由。君、携帯電話を持ってるかしら?」
彼女の問いに、僕はポケットからスマホを取り出した。
「それで、通話してみてくれる?」
僕は、スマホから叔母に通話をしようとした。しかしアンテナが一本も立っていない。
「無理みたいですね……。どうやらここは、圏外の様ですよ」
「そんなことは無いわ。だって昨日、彼女は私たちに緊急通話をしてきたのよ。『追われているから、助けに来て欲しい』って。だから私たちは、この蛭原村へとやって来た。
そして、彼女が電話で伝えてきた場所を捜索し、彼女の遺体を見つけたの……」
「どう云う事なんです?」
「今、ここは電波が妨害されている様なの。警察無線も使えない。勿論、それを知っているのは、私と今井巡査だけ。そして、どうやら、ここに来る道も、土砂崩れで通行出来ないみたい。だから夕方のバスも来ないわ」
「え?」
「どうやら、私たちは、この村に閉じ込められたみたいなのよ……」