不思議な畑(1)
文字数 956文字
長谷川刑事は四つん這いになって、辺りを探し回っている。僕は流石にそれを手伝う気にはなれない。だって、ここらはヤマビルのメッカなんだ。
「ほらあった」
長谷川刑事が、奥の茂みの地面から掘り出した物。それは、掌に納まる程度の大きさの、白い粉が詰められているビニール袋であった。
「何ですか? それは?」
「さあ? 何かしら。『誰でも上手に出来る天麩羅粉』や、『魔法のお好み焼き粉』じゃないことだけは確かね」
僕の質問をはぐらかす様に長谷川刑事はそう言って、それをビニール袋に入れ、懐にしまいこんだ。
「どうして、そんな物が、ここに埋められていたんです?」
「そんなこと、私に分かる訳ないじゃない! でも、そうね、こんなストーリーはどうかしら?」
僕は訝 し気に眉をひそめたが、長谷川刑事は楽しそうに自説を語りだした。
「彼女は昨日の午後、この白い粉の袋をどこかで手に入れた。でも、何者かに見つかりそうになったので、咄嗟に地面にこの袋を埋めて、目印にパンのビニール袋を近くに半分だけ埋めておいた。そして夜、それを取り戻そうと、君を置いて、一人で夜の散歩に出かけた。ところが……」
「随分と大胆な推理ですね」
「推理じゃないわよ。証拠も何もないもん、あくまで、あたしの勝手な憶測よ」
「じゃあ、その憶測では、その粉の袋を、耀子先輩はどこで手に入れたんです?」
「決まってるじゃない。村の中じゃなさそうだし、この先にある何かよ。行けばきっと分かるわ……」
それはそうかも知れない……。
「行ってみましょう」
長谷川刑事はそう言うと、また探検隊の隊長の様に、道を遮っている木の枝や長い草を掻き分け、先へと進んで行く。
暫く、そうした草に隠された道を僕たちが通っていくと、少し先に、パッと開けた様な場所が見えてきた。それは、だいぶ先であったのだが、樹々の間から光が見えていて、その場所だけ、木を伐採して広場を作っている様であった。
「先に行って、ちょっと見てきます」
僕はそう言って、長谷川刑事をあとに置いて明るい広場へと走り出していた。
ちょっと、このうす暗い道に飽きてきたのと、その先に、耀子先輩殺害の真相があるのかと考えると、居ても立ってもいられなかったからだ。で……。
その開けた場所、それは広場ではなくて、野菜を栽培している単なる畑だった。
「ほらあった」
長谷川刑事が、奥の茂みの地面から掘り出した物。それは、掌に納まる程度の大きさの、白い粉が詰められているビニール袋であった。
「何ですか? それは?」
「さあ? 何かしら。『誰でも上手に出来る天麩羅粉』や、『魔法のお好み焼き粉』じゃないことだけは確かね」
僕の質問をはぐらかす様に長谷川刑事はそう言って、それをビニール袋に入れ、懐にしまいこんだ。
「どうして、そんな物が、ここに埋められていたんです?」
「そんなこと、私に分かる訳ないじゃない! でも、そうね、こんなストーリーはどうかしら?」
僕は
「彼女は昨日の午後、この白い粉の袋をどこかで手に入れた。でも、何者かに見つかりそうになったので、咄嗟に地面にこの袋を埋めて、目印にパンのビニール袋を近くに半分だけ埋めておいた。そして夜、それを取り戻そうと、君を置いて、一人で夜の散歩に出かけた。ところが……」
「随分と大胆な推理ですね」
「推理じゃないわよ。証拠も何もないもん、あくまで、あたしの勝手な憶測よ」
「じゃあ、その憶測では、その粉の袋を、耀子先輩はどこで手に入れたんです?」
「決まってるじゃない。村の中じゃなさそうだし、この先にある何かよ。行けばきっと分かるわ……」
それはそうかも知れない……。
「行ってみましょう」
長谷川刑事はそう言うと、また探検隊の隊長の様に、道を遮っている木の枝や長い草を掻き分け、先へと進んで行く。
暫く、そうした草に隠された道を僕たちが通っていくと、少し先に、パッと開けた様な場所が見えてきた。それは、だいぶ先であったのだが、樹々の間から光が見えていて、その場所だけ、木を伐採して広場を作っている様であった。
「先に行って、ちょっと見てきます」
僕はそう言って、長谷川刑事をあとに置いて明るい広場へと走り出していた。
ちょっと、このうす暗い道に飽きてきたのと、その先に、耀子先輩殺害の真相があるのかと考えると、居ても立ってもいられなかったからだ。で……。
その開けた場所、それは広場ではなくて、野菜を栽培している単なる畑だった。