顔のない死体(5)
文字数 741文字
僕は被されていたシートを捲 って貰った。
確かに、服は耀子先輩が昨日着ていたものだった。髪型も彼女の物だし、生え際も襟足も彼女に間違いない。そして、いつもの鼈甲の腕輪も嵌めている……。だが……。
「どうやら、崖から落ちた際、顔面を岩か何かに強くぶつけてしまった様ですね……」
後ろから刑事さんらしい男の人の声が聞こえてくる……。それから、シートが再び被せられた音もした……。
耀子先輩の顔は、目も鼻も口も潰れ、もう彼女と判別の付かない程に傷つけられている。これが、あの美しかった耀子先輩なのだろうか……?
「彼女に間違いないですか?」
「はい」
誰が質問しているのかも分からないまま、僕は何かを答えて行く。
「彼女の名前は?」
「要耀子」
「住所は?」
「分かりません」
「君たちはどういう関係かね?」
「僕たち二人は、XX医科大学の学生で、ミステリー愛好会と云う大学のサークルに所属しています。今回は『のっぺらぼう』の噂の真偽を確かめに、ここ蛭原村に、フィールド調査に来ていました」
「分かった。君たちのことは大学の方に確認させて貰う。構わないね?」
「はい」
「取りあえず、我々が良しと言うまで、済まないが村に残っていて欲しい」
「はい」
大体、そんな遣り取りだったと思う……。
しかし、僕には耀子先輩が死んだなんて、どうにも信じられない。と言うか、絶対に信じたくは無かった。
彼女は不死身の超人の筈だ。少なくとも、僕の頭の中にいる彼女は、無敵の女性だ。崖から落ちた位で死ぬ訳がない。
そう云う思いと、自分が記憶している彼女の姿と、この遺体の特徴が彼女のものと一致していると云う事実とが、お互い譲らぬ鬩 ぎ合いとなって、僕の頭の中で大混乱を起こしていた。
本当に、耀子先輩は、死んでしまったのだろうか……?
確かに、服は耀子先輩が昨日着ていたものだった。髪型も彼女の物だし、生え際も襟足も彼女に間違いない。そして、いつもの鼈甲の腕輪も嵌めている……。だが……。
「どうやら、崖から落ちた際、顔面を岩か何かに強くぶつけてしまった様ですね……」
後ろから刑事さんらしい男の人の声が聞こえてくる……。それから、シートが再び被せられた音もした……。
耀子先輩の顔は、目も鼻も口も潰れ、もう彼女と判別の付かない程に傷つけられている。これが、あの美しかった耀子先輩なのだろうか……?
「彼女に間違いないですか?」
「はい」
誰が質問しているのかも分からないまま、僕は何かを答えて行く。
「彼女の名前は?」
「要耀子」
「住所は?」
「分かりません」
「君たちはどういう関係かね?」
「僕たち二人は、XX医科大学の学生で、ミステリー愛好会と云う大学のサークルに所属しています。今回は『のっぺらぼう』の噂の真偽を確かめに、ここ蛭原村に、フィールド調査に来ていました」
「分かった。君たちのことは大学の方に確認させて貰う。構わないね?」
「はい」
「取りあえず、我々が良しと言うまで、済まないが村に残っていて欲しい」
「はい」
大体、そんな遣り取りだったと思う……。
しかし、僕には耀子先輩が死んだなんて、どうにも信じられない。と言うか、絶対に信じたくは無かった。
彼女は不死身の超人の筈だ。少なくとも、僕の頭の中にいる彼女は、無敵の女性だ。崖から落ちた位で死ぬ訳がない。
そう云う思いと、自分が記憶している彼女の姿と、この遺体の特徴が彼女のものと一致していると云う事実とが、お互い譲らぬ
本当に、耀子先輩は、死んでしまったのだろうか……?