【捌】警官対穀潰し
文字数 643文字
普段生活している空間とはいえ、汚職警官とはぐれ女子高生が一緒だと途端に居心地が悪くなるらしく、祐太朗は極まり悪そうに部屋の端に佇んでいた。
「ほんと、クズには勿体ない部屋だな」薦められてもいないのにソファに腰掛ける弓永。
祐太朗は何も答えずにクローゼットに隠してある金庫から二〇枚の一万円札を抜くと、弓永に向かって放り投げた。束ねていない一万円札はまるで霧のように散らばって舞い、落ちた一万円札が床の一部に水溜りを作った。美沙は息を飲んだ。が、弓永は目の前に広がる一万円札の水溜りを、まるでゴミを見るように眺めると、
「何のつもりだ?」
「拾えよ。いつもヤーさんの前に這い蹲って靴を舐めてるんだ、それぐらい余裕だろ」
「あ?」立ち上がる弓永――祐太朗と睨み合う。
互いに無表情。
沈黙が靄のように重く圧し掛かる。
息を飲む美沙。
弓永が舌打ちをする。
「くだらねえ」弓永は振り返り玄関に向かった。
「いらねえのか?」去りゆく弓永の背中に祐太朗が訊ねると弓永は首を傾け、肩を竦めた。
「いらねぇ。そんな金掻き集めてまで贅沢なんかしたくねえよ。それに生憎、一秒でも早くお前のその下品な面の前からおさらばしたいんだ。だから後で電話を寄越してその子のことを話せ。二日以内に、だ。わかったな?」
「もし電話しなかったら、どうなるんだ?」
「んなこと、いわれなくてもわかるだろ?」
弓永は足早に部屋から出ていった。
緊張の糸が切れる音がした。
「ほんと、クズには勿体ない部屋だな」薦められてもいないのにソファに腰掛ける弓永。
祐太朗は何も答えずにクローゼットに隠してある金庫から二〇枚の一万円札を抜くと、弓永に向かって放り投げた。束ねていない一万円札はまるで霧のように散らばって舞い、落ちた一万円札が床の一部に水溜りを作った。美沙は息を飲んだ。が、弓永は目の前に広がる一万円札の水溜りを、まるでゴミを見るように眺めると、
「何のつもりだ?」
「拾えよ。いつもヤーさんの前に這い蹲って靴を舐めてるんだ、それぐらい余裕だろ」
「あ?」立ち上がる弓永――祐太朗と睨み合う。
互いに無表情。
沈黙が靄のように重く圧し掛かる。
息を飲む美沙。
弓永が舌打ちをする。
「くだらねえ」弓永は振り返り玄関に向かった。
「いらねえのか?」去りゆく弓永の背中に祐太朗が訊ねると弓永は首を傾け、肩を竦めた。
「いらねぇ。そんな金掻き集めてまで贅沢なんかしたくねえよ。それに生憎、一秒でも早くお前のその下品な面の前からおさらばしたいんだ。だから後で電話を寄越してその子のことを話せ。二日以内に、だ。わかったな?」
「もし電話しなかったら、どうなるんだ?」
「んなこと、いわれなくてもわかるだろ?」
弓永は足早に部屋から出ていった。
緊張の糸が切れる音がした。