【拾壱】仮面スチューデント
文字数 940文字
朝、詩織の作った朝食を平らげ、綺麗に丁度された制服に袖を通すと、美沙は学校に向かった。祐太朗は宣言通り何もしてこなかった。詩織がいた手前、何もできなかったとも考えられるが、美沙は祐太朗がそんなことは絶対にしないと自信を持っていた。理由はわからない。ただ何となく祐太朗だったら信じてもいいと直感がそう告げていた。
何だろう、この気持ち――美沙のこころは揺れていた。
登校中、同じ制服を着た生徒たちが自分に妙な視線を向けてくるのに美沙は気づいた。美沙は早歩きで学校へ向かった。教室へ入ると、麻奈美が声を掛けてきた。
「美沙、昨日何してたの? 変な男と一緒だったって聞いたけど……」
変な男――祐太朗だとわかって美沙は妙に納得してしまった。確かに変な男だ。
しかし、祐太朗と一緒の所を誰かに見られていたなんて。おそらくそのウワサがどこからか広まった所為で、自分に変な視線が向けられていたのだろう。本当に窮屈だ。ちょっと変わったことをするだけで、すぐに槍玉に挙げられるなんて、まるで魔女狩りのよう。
でも、麻奈美も自分のことを心配して声を掛けてくれたのだから、麻奈美に対して怒りをぶつけるのはお門違いだ。美沙はいつもの作り笑いを浮かべて麻奈美をあしらった。
亜美がふたりの金魚の糞を引きつれて現れた。三人は麻奈美を押しのけ、美沙の目の前に躍り出た。亜美を中心にした三人組が下卑た笑い声を上げるうしろで、麻奈美が悲しそうな表情を浮かべているのが、美沙のこころを締めつける。
友達は、ただ一緒にいるから友達なのではない。
男女を問わず会話には中身がなく、誰と誰がつき合っていて、誰が誰を好きで、誰が誰を嫌いかなんて会話で表面的な仲良しを気取っていても、陰では相手の価値を値踏みし、蔑み貶める。そんな関係、友達でも何でもない。クラスメイトの奴らにとって、友人も恋人も所詮はブランド物感覚の存在でしかない。だから、自分にとって用済みになれば平気で切り捨て、冷酷にもなれる。そんな軽薄なクラスメイトたちが美沙は大嫌いだった。
「美沙、大丈夫?」亜美が、美沙の様子を窺った。
「うん、何でもない」美沙は再び笑顔の仮面をつけなおした。
何だろう、この気持ち――美沙のこころは揺れていた。
登校中、同じ制服を着た生徒たちが自分に妙な視線を向けてくるのに美沙は気づいた。美沙は早歩きで学校へ向かった。教室へ入ると、麻奈美が声を掛けてきた。
「美沙、昨日何してたの? 変な男と一緒だったって聞いたけど……」
変な男――祐太朗だとわかって美沙は妙に納得してしまった。確かに変な男だ。
しかし、祐太朗と一緒の所を誰かに見られていたなんて。おそらくそのウワサがどこからか広まった所為で、自分に変な視線が向けられていたのだろう。本当に窮屈だ。ちょっと変わったことをするだけで、すぐに槍玉に挙げられるなんて、まるで魔女狩りのよう。
でも、麻奈美も自分のことを心配して声を掛けてくれたのだから、麻奈美に対して怒りをぶつけるのはお門違いだ。美沙はいつもの作り笑いを浮かべて麻奈美をあしらった。
亜美がふたりの金魚の糞を引きつれて現れた。三人は麻奈美を押しのけ、美沙の目の前に躍り出た。亜美を中心にした三人組が下卑た笑い声を上げるうしろで、麻奈美が悲しそうな表情を浮かべているのが、美沙のこころを締めつける。
友達は、ただ一緒にいるから友達なのではない。
男女を問わず会話には中身がなく、誰と誰がつき合っていて、誰が誰を好きで、誰が誰を嫌いかなんて会話で表面的な仲良しを気取っていても、陰では相手の価値を値踏みし、蔑み貶める。そんな関係、友達でも何でもない。クラスメイトの奴らにとって、友人も恋人も所詮はブランド物感覚の存在でしかない。だから、自分にとって用済みになれば平気で切り捨て、冷酷にもなれる。そんな軽薄なクラスメイトたちが美沙は大嫌いだった。
「美沙、大丈夫?」亜美が、美沙の様子を窺った。
「うん、何でもない」美沙は再び笑顔の仮面をつけなおした。