第23話 何故、会社の人事は社員が考える人事と違うのか?

文字数 1,245文字

 4月は新年度のスタートの月である。会社員にとっては移動の時期でもあり、めでたく昇格する人もいる。だが会社が行う人事と社員が考える人事は違う場合になる事が多い。例えば営業部においてたいした実績を上げてもいないのに課長、部長と昇格し最終的には取締役にまで昇格する人がいる。反対に成績を上げていてもある程度までは昇格するが部長止まりでその上の会社の経営を担うようなポジションには就かないで終わる人もいる。
 多くの社員にとっては仕事が出来て会社の業績を上げた人が順調に昇格して取締役までになるのが望ましい。その理由は自分も努力して仕事をして成果を上げれば会社の責任あるポストに就けると思い描けるからである。そして社員の多くがより仕事するようになれば、会社にとっても業績も上がってプラスになる。
 だが、会社には社員とは違う会社の論理があってそれに従い動いていく。もちろん仕事の成果を上げて会社に貢献した人にはそれなりの地位にはなる。だが、会社の経営側である取締役となると話しは別である。単に仕事が出来るだけでなくプラスアルファが必要になる。
 そのプラスアルファとは会社にとって有益な何かをもたらす可能性がある事である。例えば、会社の有力な取引先の幹部の子息や親会社の幹部と有力な繋がりがあって会社にとって利益になる人脈がある人だ。又、会社の経営者と出身大学が同じというのも有力な要素である。大学が同じであれば共通の話題もあり、心を許して信頼感を持った付き合いがしやすい。そういう仕事が出来る出来ないとは関係のない要素もある。経営者も人間でいつでも合理的に行動するわけではない。そして世の中、正しい事がいつも通じる訳ではない。
 しかし、社員が考える人事と会社が行う人事の乖離があまり大きくなると会社にとっては危機になってくる。やはり、現場で働く社員が腹落ちして一生懸命に働く環境を作るのも会社の経営者がしなければならない大切な仕事である。
 仕事の成果を上げないで、会社にとって有益な情報をもたらすとか有力な取引先の関係者であるという理由で会社の経営幹部になった人が増えていくような会社の未来は厳しいと思わざるをえない。かつて経営危機に陥った松下電器産業の松下幸之助は経営幹部だけでなく全国の販売代理店の社長、現場で働くリーダーを全員、熱海に集めてお互いに腹落ちするまで何日も泊りがけで会議をした。その結果、現場で松下の製品を打っている販売代理店の士気は上がり松下電器産業の業績が復活するようになった。
 会社の経営者が何を考えているのか?何をしたいのか?を社員も共有する事は会社の業績を上げるのには不可欠である。そして会社の経営者が何を考えているか最も表れるのが会社の人事である。だからこそ社員が注目しているのである。その為、会社の人事と社員が考えている人事は一致する事はなくても、その乖離があまりに大きくなると会社の未来はない。何故なら会社に利益をもたらす最大の要因は社員のやる気と働きだからである。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み