第17話 弱さを持った強いリーダー達

文字数 952文字

 ヤマト運輸の社長になった小島昌男社長は東京大学を卒業して、父が経営する会社の大和運輸の入社した。だが入社半年後には肺結核になって4年半も会社を休んで病を治すのに専念した。そして、経営の神様と言われる松下電器の創業者である松下幸之助も幼少時代からから体が弱くて20代前半には初期の肺結核にかかった。
 ふたりに共通しているのが若い頃に体が丈夫でなく大病を患っていた事だ。年齢を重ねてからの大病はもちろん大変でつらいものだが、若い頃の大病はもっとつらくて苦しい経験である。何故なら若い頃、人は元気で体力もあって怖いものなしの処がある。その為、自分の力を過信していて、将来に対する夢や目標に向かって行く先は前途洋々と開かれていると感じる時期でもある。その将来に夢を持てる時期に病に侵されるのはつらい経験であったに違いない。
 それに対して、ヤマト運輸の小倉昌男や松下電気の松下幸之助は20代の若い頃に病にかかって人生の最初に挫折を経験した。こうした若い頃に挫折を経験した若者は、原因が病気であれば健康には気を付けるようになるし、自分の不注意や思い上がりで失敗した者はその後の行動に用心して慎重になる。
 慶応義塾大学大学院の経営管理学の清水勝彦教授は慶応ビジネススクールの学生に交換留学で海外のビジネススクールに行くのを勧めている。その理由は「負けた」という経験をしてほしいからである。慶応のビジネススクールの学生は、日本では優秀で失敗したと言う経験はあまりない。その為、海外のトップスクールに留学して自分よりも優秀な学生に出会って、自らを優秀だと思って高慢になっていたのに鼻をへし折られるような経験をしてほしい。そして「負け」を経験する事で自分の限界を知る事になり、その限界を踏まえて自分とは本当は何者で今後どうやって生きていくのかを考えるきっかけになると述べている。
 人は自分の力を過信しがちである。それを若い頃に挫折した経験を持つ者は、自分の力を過信することなく、本当の自分に向き合い自分が何が出来るかを考える。弱さを持ったリーダーだから人の痛みもわかるし、本当に強いリーダーになれる可能性を持っているのである。

参考文献
「あなたの会社が理不尽な理由」慶応義塾大学大学院経営管理研究科教授 清水勝彦 日経BP社
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