第4話 弱いから生き残る事が出来たホモ・サピエンスが持っていた強み

文字数 1,487文字

 人類の直接の祖先である現生人類ホモ・サピエンスは約20万年前アフリカのタンザニア地方の大地溝帯に誕生したと言われている。その現生人類ホモサピエンスの特徴としては他の動物達や旧人のネアンデルタール人より体格で劣り弱かった事だ。
 それでは何故、体格で劣るホモサピエンスは生き残る事が出来たのだろうか?それは、力が弱いホモサピエンスは個としては弱くても、他と繋がる事によってその弱さを強みに変える事が出来たからだ。狩猟では大勢で協力して獲物を囲い込み高い確立で捕獲出来るようになった。それでも獲物を追いかけて狩猟によって得られる肉には限りがあると、今度はより安定した食物を得る為に植物・農作物を育てる農耕牧畜生活をするようになっていった。そして、多くの農作物を育てるのを可能にしたのは狩猟生活よりも大きな集団で生活して協力する事だった。集団で生活する個人がそれぞれの特長を活かして役割を分担して作業する事により効率的に農作物を育てるのが可能になった。こうして体格で劣る力が弱い人類は弱みを強みに変える事が出来て生き残っていく事が出来たのだ。
 人は個としての弱さを強みに変える為、多くの形の組織を作ってきた。例えば組織の形はフレデリック・ラルーの「ティール組織」によれば現在迄、5段階に分かれて発展してきたと言う。
 最初の段階は「衝動型組織」で力の強い者がリーダ―になって権力を持って命令を出して個人の力で多くの者を支配してマネジメントしていた組織だった。
 次の「順応型組織」では聖職者や軍隊などのように社会的階級に基づくヒエラルキーによって指示・命令が明確に出され規則、規律、規範による階層構造が誕生した。
 そして「達成型組織」は科学技術の発展とイノベーションにより誕生してヒエラルキー自体は存在しているが、仕事でより成果を上げて評価されれば出世も可能な実力主義の競争の組織が現れた。但しこの組織での個人は常に生存競争にさらされていて気が休む事は出来なかった。
 その反省も踏まえて「多元型組織」組織では個人の多様性が認められ尊重されるようになった。ただし、この組織の場合はボトムアップによる合議制により意思決定がされるので時間がかかると言う欠点があった。又、合議制で決められなければ結局は社長やリーダーが決定するという以前の形は残った。
 そして現在では組織は社長や株主だけのものではなく、主役は組織を構成する個人であり組織の存在意義に共鳴して個人が目的達成の為に行動するという自主的な新しい進化型の組織の「ティール組織」が生まれてきた。
 このように人類が誕生してから人は人と繋がって組織を形成し強くなり、環境の変化にも対応して生き延びてきた。そして人が創った組織の形も人類や科学技術の発展や時代の変化と共に形を変えて進化していった。しかし、現実には今でも人間同士の競争や争い事、組織の中での生存競争もなくなってはいない。そして、最近では人類は本当は弱かった時の事を忘れて、傲慢にふるまって地球を支配して自然環境も破壊している。人は地球上で最強の生物になったからこそ、ひとりひとりが「いい気になるな、調子に乗るな」と戒めを持つ事が必要である。
 今後も人は本来は地球上で力の弱かった存在であった事を忘れてはいけない。人類の祖先であるホモ・サピエンスのように弱さを知っている人は強い。しかし、本当は弱かったのを忘れて自らの強さに慣れてしまうと人は弱くなってしまう。

参考文献
「全世界史 上巻」著者 出口治明 新調文庫
「ティール組織」著者 フレデリック・ラルー 訳者 鈴木立哉 英治出版

 
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