第9話 阪神タイガースって何?

文字数 2,260文字

 東京生まれで東京育ちの私だが小学生の頃から、阪神タイガースのファンである。2021年の阪神は前半戦を新人の佐藤輝明が期待通リにホームランを量産して投手陣も好調で首位を独走し、今年こそ2005年以来の優勝が出来ると期待した。しかし、8月になると佐藤輝明はホームランどころかヒットも打てなくなり59打席連続無安打と言う不名誉なセリーグ記録を作った。他にも主力選手の大山、糸原等の不調も重なりチームの成績は低迷してきた。そして、ペナントレース終盤になって調子が出て勝ち続けた東京ヤクルトスワローズに優勝を持っていかれた。勝利数からすれば77勝を挙げた阪神が73勝のヤクルトよりも多かった。ただ引き分け数が10の阪神の勝率の.579に対して、ヤクルトの方が18と多く勝率.584となって阪神を上回りセリーグの優勝を果した。又、昨年の阪神の勝利数77勝はパリーグ優勝チームのオリックスの勝利数の70勝も抜いてセリーグとパリーグの12球団合わせた中でも一番多かった。それでも阪神は優勝出来なかった。さらに日本シリーズに出場出来る可能性があったクライマックスシリーズでも阪神は3位の巨人に連敗してセリーグ優勝のヤクルトと戦う事さえ出来なかった。
 何故、こうも阪神は昔から競り合いに弱いのか?ここ一番という重要な試合に勝てないのか?例えば、巨人が9連覇を果たした1973年の阪神は残り2試合を残して1勝すれば優勝という処で連敗して優勝を逃した。他にも2008年の岡田監督の時も前半戦は首位を独走、7月9日時点では2位に並んでいた中日と巨人に13ゲーム差をつけて優勝は確実と思われたが、北京5輪で主力選手を取られた事もあり失速、巨人に優勝を持っていかれた。
 いい処まで行くのだが肝心な試合で勝てなくて優勝を逃す事が多い阪神タイガースは普通であればファンも愛想をつかして人気が落ちてくるのだがそんなことはない。タイガースファンは悔しい思いをしながらも、来年こそはと阪神の優勝を期待するのである。ファンの期待を裏切る事が多い阪神だが人気は衰えない。
 こうなると阪神タイガースって何?と改めて考えざるを得ない。だが、男性が女性を好きになる時に具体的な理由はあるだろうか?逆に女性が男性を好きになるはっきりした理由はあるのだろうか?相手の外見やある一瞬の時に見せた仕草、心くばりなど人はそれぞれの理由で異性を好きになる。言葉ではうまく説明できないけれど好きになるのである。同じように阪神の好きな理由はとは聞かれても具体的には伝統ある縦じまのユニフォーム、個性的な選手など表面的には答えられる。だが個人が思っている本当に好きな理由はうまく説明できない人の方が多いのではないのか。
 例えば私が阪神を好きな理由のひとつには江夏や田淵、掛布に岡田と歴代のスター選手が好きな事がある。だがそれ以外にも巨人戦で江本や古沢が先発して好投していたのに監督に交代させられた時に納得出来ないとした振舞いをした。普通なら監督に対して不満な態度は許されない。会社員であれば上司の部長に逆らう事は出来ないのと同じだ。だが阪神の江本や古沢のように監督に対して不満や抗議する選手がいたのは良い意味で驚きであり新鮮だった。江本も古沢も阪神のエース級の投手としてチームの勝利の貢献してきた。そして勝ちたいという気持ちが監督に抗議するような態度に出たのである。プロ野球の監督は権力を持っているが監督の采配が常に正しいとは限らないのである。日頃、会社の上司に文句があっても私には出来ないような事をやってくれたのでスカッとしたのである。このような私が阪神を好きな理由は他の人に言ってもわからないし理解してもらうのは難しい事だと思う。
 阪神はプロ野球の老舗球団で1年先に誕生した巨人と阪神の戦いを持ってプロ野球はスタートした。それから巨人対阪神と言えば「伝統の一戦」と言われて両チームの選手は他の対戦チームと戦う時よりも必死になった。そして両軍の代表する選手の戦いで、例えば長嶋対村山、王対江夏、堀内対田淵、江川対掛布などの両チームを代表するスター選手が互いに全力を出した対戦は見ごたえがあった。
 しかし、巨人が優勝を重ねて日本一のプロ野球チームとして輝いているのに、そのライバルと言われる阪神は球団創設以来の通算勝利数では5456勝でセリーグでは巨人に次いで2番目に多い2位である。だが優勝回数となると2リーグになってからは5回と極端に少なくなる。1リーグ時代の優勝数の4回を加えても9回しか優勝していない。そして2リーグに分かれてからパリーグの覇者を破って日本一になったのは1985年にダイナマイト打線の復活で優勝した時の1回だけで、パリーグの楽天と並んで最も日本一の回数が少ない球団である。これは名門球団である阪神としては寂しい数字で、とにかくこれからの阪神には優勝する事が求められている。そして、優勝する為には、勝負強くなってここぞという重要な試合に勝つ事だ。今迄さんざん悔しい思いをしてきたファンの無念を晴らして欲しい。
 藤浪や佐藤輝明といったこれからの球界を代表するような選手になれる素質を持った投手と打者が阪神にはいる。阪神に入団したら選手は育たないなどと不名誉な事は言われないように成長してもらいたい。人気も実力もある選手が多く巨人と並んで人気が高い阪神が優勝回数を重ねていけば、他のスポーツの人気に押され気味と言われているプロ野球の人気も押し上げる事にも繋がると思う。
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