第2話 変わっていかなければ

文字数 1,357文字

 幼稚園を卒園して、地元の小学校に入学した私は勉強はほとんどしなかった。私の通っていた小学校は都心にあった公立の小学校だったが教育熱心で、その上の中学校も入学してから頑張って勉強していれば高校はいわゆる名門と言われる高校に合格できると言われていた。その為、地元の子供の数が少ないこともあり他の学区域から名門高校を目指して越境入学してくる生徒が多かった。そして越境入学している生徒は小学校に入学する前から勉強に対する問題意識が高かった。それに比べて私のような数少ない地元の子供は、地元にあるからと言う理由で入学しただけで、あまり勉強することもなく草野球のチームを自分達で作っては野球に夢中になっていた。
 
 そんな小学生だった私だが6年生になり、受験勉強も全くしていなかったのだが、突然親から勧められて有名私立大学の付属中学校を受験することになった。私にとって突然に言われた受験はそれまで全く受験勉強をしなかったのだから合格する筈もないと思っていたが、その通リになって結果は不合格だった。しかし、そうは思っていても実際に合格発表を見に行き自分の受験番号がない不合格という事実は悔しい出来事だった。親の言われるままに受験させられて不合格になったのだが、不合格になると言う事はこんなにも悔しいものなのかと言う事を子供心に思った。さらに不合格だった後で父親に「中学受験は失敗しても義務教育だから中学にはいけるが、高校受験に失敗したら高校には行けない」と言われた。父親の方は悪気はなく次の受験は頑張れという意味で言ったのだろうが、「次の高校受験に失敗したら高校には行けない」という言葉はまだ子供だった私にはショックだった。これが少し成長した後だったら自分の学力に合った高校には入学出来ると思えたのだろうが小学6年の私にはそうは思えなかった。とにかくこの不合格という出来事により、二度とこのような悔しい思いはしたくないと思った。ここでの経験も私の反骨精神が芽生えるきっかけとなった。

 この不合格をきっかけに地元の中学校に入学してから私は変わった。進学した中学校は公立だったが高校受験の指導に熱心な先生が多くて偏差値の高い高校への多くの生徒が入学するという進学実績を誇っていた。そしてその中学で私は高校受験では失敗したくないと思い、越境入学してきた多くの生徒に負けないように勉強するようになった。特に科目の中で英語は帰国子女というのもいなかった時代だったので、皆が中学から始めて勉強する科目でありスタートラインで平等だった。その為小学校で勉強していなかった私にとっては好成績を取りやすかった。そして、始めて好成績が取れた英語を好きになり、勉強の出来る生徒が多い中でも常に上位の成績を取る事が出来るようになった。又、英語だけでなく数学、国語も私が進学を希望していた私立高校の受験科目だったので集中的に勉強して成績は良くなっていった。

 中学受験に失敗したのをきっかけにして私は変わり、英語という自分の好きな科目も出来た。自分が意図したのではなかったが中学受験をして失敗しなければ、中学生になっても私は勉強する事もなく高校受験をしていただろう。小学校6年生で悔しい思いをしたのだが、自分が変わつていくきっかけになったのは確かな事だった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み