第10話

文字数 7,476文字

第10話 路地裏のない街

高校の卒業式の日を迎えた。
クラスメートと会える日も今日が最後となり、卒業式が終わっても体育館のあちこちで別れを惜しむ生徒たちの輪が出来た。
地元で就職した生徒。県外へ就職する生徒。
大学の合格通知をすでにもらった生徒。まだ合否が決まっていない生徒など様々だ。
繭実は東京北千住のデパートに就職が決まり、東京へ引っ越しすることになった。
花織は繭実を見つけるとその手を取り喜んだ。
「就職決まってよかったね。おめでとう。東京に行くんだってね」
「花織も明京大学に入るんでしょ。だったら東京で一緒に住もうよ。ねぇそうしょ。ネッ!ネッ!」
繭実のハイテンションな誘いに花織もつい調子を合わせてしまった。
「うん。それはいいわね。ルームシェアってやつね。そうだね。そうしょうね!」
しかし花織の心の奥では明京大学への入学を未だ決めかねていた。

花織は健人に会って相談したかった。どうしたらいいかヒントだけでもアドバイスが欲しかった。
夜更けにみぞれが降り、凍った道に足を取られながら足利市駅に向かった。
そして健人が住む横浜をめざした。
渋谷駅で乗り換えのため忠犬ハチ公前広場を通り過ぎた。
その時、浅黒いメイク、茶髪にルーズソックス、アクセサリーてんこ盛りのスクールバック、地元じゃあり得ないほど短いスカートの女子高生の一団とすれ違った。
すれ違う大人たちが左右によけて道を譲った。
全員、完璧なまでに統一されたスタイルで圧倒的な存在感を放っていた。あれが本物のコギャルなんだと思わず二度見した。
あのルーズソックスを私だって履けたはずなのに、もう高校を卒業してしまった。
〝これ履けるのは今だけでしょ〟と繭美が言っていた言葉が心に突き刺さった。
彼女のように自分がやりたいことに素直に動けなかった自分を悔やんだ。

電車はやがて多摩川を渡り、東京を越えた。
地下鉄が地上に出ると横浜市のセンター北駅に到着した。
昨年、開通したばかりの鉄道とは聞いていたが降りた乗客は花織だけ。たった一人だった。
吹き抜けのある大きくて広いビルの中の駅。けれど乗客は他に誰もいない。
遠くの改札口で人影が手を振っている。きっと健人だろう。走る靴音が高いビルの天井に響いた。
二人でエスカレーターを下りながら花織は聞いた。
「ねえ。聞いてほしいことがあるの。どこか食事でもしながら、ゆっくり話せるようなお店がないかしら?」
しかし健人は何も言わず、彼女の手を引いて駅の外へ連れて行った。

駅前ロータリーの真ん中にコスモス畑が風によそぎ、周囲は一面、赤茶色の土がむき出した造成地が遥か彼方まで広がっていた。
そのコスモスの中からシラサギが飛び立つと、遠くに連なる緑の丘に向かって行った。
彼が港北ニュータウンに住んでいると聞いていたからオシャレなカフェやレストランが並ぶ街を想像していた。
だが、それにはまだ早過ぎたようだ。
「この通り、まだ何もないんだ。もし良かったら、うちで食べないか」と健人は言うと駅前の空き地に路駐してあった車へ連れて行った。

アメリカのような広い道。ダンプカーが何台もすれ違う。
植えたばかりの街路樹が続く道に沿って真新しいマンション群が整然と並んでいた。
けれどカーナビを見るとまだ道もない空白の地図の中を進んでいた。
やがて道の角を曲がり、住宅地に入ると計画的にデザインされた街並みが整然と続いていた。
彼が言っていた路地裏のない街とはこのことかと感じた。

車は彼の家に到着した。
赤いつるバラの垣根に囲まれた家の表札には鳩谷と大沢の連名になっていた。
彼は玄関には入らず花織を庭に案内した。
芝生の庭にはバーベキューの白い煙が立ちのぼり、人が十人近く集まりビールを片手にすでに盛り上がっていた。
二人が入ると健人の父、鳩谷晴輝と母の由美子がすぐに気が付いて近寄ってきた。
挨拶もそこそこに晴輝は集まっていた人たちに向かって花織を紹介した。
「こちらは健人のえぇと。お友達でよかったかな。北宮花織さんです。皆さんよろしく」
すると集まった人から一斉に拍手が起こった。
すぐに二人にビールが注がれ乾杯となった。
「さぁさぁ。一緒に飲もう。飲もう」
「健人君。お似合いだよ」
「こんな美人どこで見つけたんだよ。浮気すんなよ」と皆、酔った勢いで口々に勝手気ままな言葉を放った。
まるでいきなり披露宴に放り込まれたようだった。
皆のパワーに気遅れしていた花織の前に姉の大沢美憂がやってきた。
「突然で驚いたでしょう。ここにいる人は父の会社の人たちなの。
みんな、良い人たちだけど少し酔っているから大目に見てあげてね」
美憂はグリルで肉を焼いていた夫の大沢博之の所へ走って行った。そして焼きたてのビーフを皿に分けてもらうと花織に勧めた。

美憂によると父親の晴輝はピジョン乳業という乳業メーカーを経営している。
そして美憂と博之は2年前に結婚し、博之はそのピジョン乳業で働いている。
毎年春、自宅に社員を招いてバーベキューを開くのが恒例行事になっていた。そこへたまたま花織たちが飛び入り参加したわけだ。

晴輝は博之を花織に紹介した。
「この博之君は優秀でね。私はもうお払い箱になりそうだよ。ワッハハッ!」
ゆくゆくは博之や健人に会社を任せるつもりでいるようだった。
会社の将来を語る父親の顔には満足げな表情が溢れていた。
「健人も学校出たら、父さんを助けてくれると嬉しいんだけどな」と健人の肩を叩いた。
博之はカルビを焼く煙に咳き込みながら言った。
「お父さん。健人君に余計なプレッシャー掛けちゃ可哀そうだよ。健人君にも考えがあるでしょうに」
「会社の試食係だったらOKだよ」と健人は笑いながら肉を皿に取り分けた。

健人はみんなと離れた庭の隅にキャンピングチェアーを広げ、花織と二人並んで座った。
「ところで僕に話したいことって何?」
花織は大学入学の事、倒れた父のことなどを彼に話した。
だが健人は答えに詰まってしまった。
大学進学を勧めれば花織といつでも一緒にいられる。けれど倒れた父親に代わって孤軍奮闘する母を残して東京に行くのは心残りだろう
だからと言って母を気遣って家業を手伝えば大学進学が心残りになるだろう。
彼は明京大学への入学について否定も肯定も出来なかった。

花織は空になったグラスを握りしめたまま、うつむいたまま黙ってしまった。
彼女は答えを求めて、ここまで来たのに何も答えを得られなかったことに失望したのだろう。
木漏れ陽が彼女の横顔に陰を落とし揺れていた。
健人は焦りを感じた。このまま失意のまま彼女を帰すことになってしまう。
彼もまた氷だけになった空のグラスを持ったまま考え込んだ。
庭の真ん中からみんなの笑い声が聞こえくる。時々彼らがこちらを見ているような視線を感じた。
健人はそんな空気を察して困惑した。
庭の隅で互いにうつむいたままでは誰が見ても異様だ。まるで別れ話でもしているようにしか見えないだろう。

しばらくすると風向きが変わってグリルの白い煙が流れてきた。香ばしい臭いに健人は顔を上げた。
煙と一緒に美憂が二人の所へやってきた。
美憂は花織の肩にそっと手を当てて慰めた。
「今度、このしょうもない弟よりもっとマシな人を紹介してあげるから元気出してね」
「いいえ。そういうことでは……」と花織は首を振った。
「じゃ。健人。あんたが振られちゃったの。ヤバイのはあんたの方なのね」と美憂は指を差して笑った。
彼は憮然として文句を言った。
「だから。違うって言ってるじゃん!」
「じゃ。何が違うのよ。言ってごらんよ」と美憂は腕を組んで健人に詰問した。
健人は返事をしなかった。
代わりに花織が顔を上げて聞いた。
「お姉さんご夫婦はどうしてピジョン乳業を継ごうと思ったのですか?」
「それはね。家族だからよ」
「家族。それだけですか」
「答えがシンプル過ぎたかしら。父親が築いたものを家族が守りたいと思うのはごく自然なことでしょ」
「家族が守ると……そうですよね。家族でしか守れないですよね……」と花織は思い詰めたように一人呟いた。
「うわっ。調子に乗って少しカッコいいこと言っちゃったかしら。なんか気恥ずかしいわ」
美憂は何か深刻そうな雰囲気を感じ、これ以上、深入りを避けようと話題を逸らした。
「二人ともグラスが空じゃないの。ちょっと待っててね」
美憂はみんなが集まっている間に割り込むとクーラーボックスを開けてワインの品定めを始めた。

彼女はスパーリングワインを持って戻って来た。それをグラスに注ぐと花織に手渡した。
「なんか深刻そうね。これ飲んで盛り上がろうよ」
そのグラスを健人が横取りして答えた。
「彼女はまだ未成年だから、僕が代わりにもらうよ。彼女は東京の大学に行くか、家業を手伝うべきか迷っているんだよ」
「そういうことだったのね。ヤダァ。ゴメンね。別れ話かと思って心配したわ」
美憂は手を合わせて謝る身振りをしながら、さらに聞いた。
「迷うなら、どちらが本当にやりたかったことなの?」
「本当にやりたいことですか……」と花織はそれ以上答えられなかった。
美憂はグラスを一気に飲み干すと自信ありげに言った。
「私たちは会社を守ることがやりたいことだったから。それに悔いはないわ」
「自分がやりたい道ですか……」
「またまた柄にもないセリフを吐いちゃったじゃない。これ以上言わせないでよ」と美憂は照れ笑いして博之の元へ逃げて行った。

花織は〝自分がやりたい道〟に迷って相談したはずなのに再び振り出しに戻ってしまったことに愕然とした。
彼女は健人に聞いた。
「結局、私はどうすればいいのかしら?」
「これ以上、自分だけで考えていても答えは見つからないだろうね。だから、それぞれの世界で生きている人の話を聞いたらどうだろうか」
「それって誰に聞けばいいのかしら」
「大学のことは……」と健人は自分の顔を指さした。
「そうだったわね。大学の先輩のあなたに聞くべきね。では教えてください。先輩!」と花織は膝の上で三つ指を突いた。
「東京で大学生活が始まるだろ。それは君にとってまったく新しい世界だ。新しい友達も待っている。それは今しか得られない価値があると思うよ」
花織は学園祭で訪れた大学キャンパスの記憶がよみがえった。
気分が高揚したあのワクワク感が忘れられない。
繭実とルームシェアすれば寂しいこともないだろう。いや寂しいことなんて考えられない。健人もいつもそばにいてくれるから。
彼が言う通り、東京暮らしには新しい世界、楽しい毎日が詰まっている。

「じゃ、家業の方は誰に聞けば?」
「花見野山荘のことを最も知っている人って誰?」
「そうね。お父さんかな」
「それならお父さんに花見野山荘のことを聞いてみたらどうだろうか。君にとって花見野山荘の味を守る価値があるか、わかるかもしれないよ」
「そうか。そうだよね」と彼女は言うとパッと顔が明るくなった。

花織の晴れやかになった顔とは対照的に健人は胸騒ぎを感じた。
もし彼女が家業を継げば足利の街から離れることはできなくなる。それは永遠に離ればなれになることを意味するかもしれない。
家業を継ぐ選択肢は本音では避けてほしいのに素直に言えなかった。

バーベキューが終わると健人は花織を駅まで見送った。
人も疎らな駅のコンコースに夕陽の光の長い帯が差し込んでいた。そのオレンジ色の光の中を彼女は改札に向かった。
すると健人は彼女の腕を引いて呟いた。
「君がどんな道を選んだとしても僕たちは……」と言い掛けた時、突然、行先案内のアナウンスがコンコース内に大きく響いた。
「えっ。今、何て言ったの?」
健人は彼女の腕から手を放した。
「いや。いいんだ。帰り道、気を付けて」



花織は一人、父の勇三の病室を訪ねた。勇三は彼女に気付くと顔がほころんだ。
ベットサイドのトレイには白いプラスチックの皿が数枚あった。しかし昼食を食べ終わった割には皿があまり汚れていなかった。
「ほんの少ししか食べさせてもらえないから本当に辛いわ。八雲最中が懐かしいよ。アンコが夢に出てきそうだ」と勇三は苦笑いした。
かつて毎日のように味見していたから食傷気味になっているかと思っていた。
だが、いまだに食べたいとは。本当に和菓子のために生まれてきた人だと思った。
「花織。今日は母さんと一緒じゃないんだね」
「私。ちょっと聞いてほしいことがあって」
勇三は何も言わず頷くと花織の言葉に耳を傾けた。
「お母さんを一人置いて東京の大学へ行っていいものか迷ってね。それとも……」と彼女が口ごもった。
すると勇三がその言葉をつないだ。
「それとも。店のことが気になるのか?」
「そうなの。で、そのことだけどね……」
またも勇三は言葉を先回りして言った。
「もしかして8代目を継ごうかどうか迷っているのか?」
誰もが8代目はいずれ兄の正弥が継ぐものと思われていた。
それだけに勇三自身の口から花織に向けて8代目の言葉が出たのは意外だった。
だが勇三にそれは拒絶されるような気がした。
彼女は意を決して消え入りそうな声で答えた。
「……。はい」
すると勇三は腕を組み目を閉じたまま何か考え込んでいるようだった。

病室には午後の日差しが差し込み、二人の間にゆっくりとした時間が流れた。
やがて勇三はコルセットをした腰を不自由そうに動かし、ベッドサイドの棚に手を伸ばした。
だが彼の顔には痛みを我慢している表情が見えた。
花織は慌ててベッドサイドに近づき、勇三が指さした紙袋を取り出した。
「それ、誰にも見せたことがないものだが」
勇三はそう告げるとその紙袋を彼女の手に渡した。
中を覗くと分厚いノートが3冊入っていた。
しかし花織はノートに何か深くて重いものを直感した。
「これ何? 何だかわからないもの。預かれないよ」と彼女は受け取りを躊躇(ちゅうちょ)した。
「これを読んでも興味が湧かなければ、東京の大学へ行った方がいい。店のことは俺と母さんでなんとかするから何も心配するな」
「でも……」
「迷っているんだろ。だったら目を通してごらん」
「わ、わかったわ。いったん預かるけど」
底が破れかけた紙袋を胸に抱えて彼女は病室を後にした。

花織は家に戻ると自室で古びたノートに目を通した。
それは父がプライベートに長年書き溜めた日記だった。それは直近3年分あった。
日記には毎日の原料配合の記録、機械調整の記録など数値記録に始まり、社員の意見まで一つ一つ克明にメモされていた。
お客様からの手紙やクレーム。新聞や雑誌に紹介された記事の切り抜きなどが綺麗にスクラップされていた。

花織はその手紙の1つを読んでみた。
差出人は千葉の女性だった。
〝地元の全国物産展で八雲最中を見つけました。懐かしくて思わず買ってしまいました。
昔、好きだった彼と紅葉狩で日光へドライブした帰り、織姫神社に寄り道しました。
夕陽の街並みを眺めながら八雲最中を二人で分け合って食べたのが懐かしいです。
いまでも八雲最中を食べるとあの頃のときめく心が蘇ります。思い出をありがとうございます〟

花織は織姫神社で健人と街並みを眺めた記憶と重ねて胸が熱くなった。
今まで花織は味と品質がすべてだと思っていた。だがそれだけではない。それを食べてその土地を思い出す。
八雲最中には足利の〝思い出〟と言う大切な役割があることを教えられた。

花織はさらにページをめくり読み続けた。気が付けば日付が変わる時刻になっていた。
この日記よりもっと古い日記もどこかにきっと保管されているのだろう。それは想像しただけで胸がいっぱいになった。
花見野山荘の今の味に至る歴史と言うべきものだ。まさに父の生きざまそのものだった。

そして真新しい3冊目を開いた。
そのノートの後半には腰の骨折で入院してからの闘病生活が書かれていた。
しかし昨年暮れに糖尿病を宣告された日で日記が終わっていた。その日以降、ずっと日記が空白のままだった。
ふと、母が八雲最中を手付かず病院から持ち帰った日のことを思い出した。
それは勇三がもう花見野山荘の味を守れないと悟った日なのだろう。
きっとこの日記の続きを父が私に託したのだと感じた。

やはり深くて重いものがそこにあった。
花織は空白のページを開いたまま顔を手で覆った。しかし目を閉じても真っ白なページが目の前に浮かび上がった。
人々の旅の思い出になる八雲最中を守らなければ……けれど私に守れるのだろうか……しかし私以外に守る人はいない。
花織は顔を覆っていた手を開き目をゆっくり開けた。
やはり私……私しかいない。



数日後、キッチンで母の和子が夕食の支度をしていた。
その背後に花織が直立不動で立つと突然、決意を打ち明けた。
「私。花見野山荘の8代目を継ごうと思うの」
和子は振り返り、ビックリした顔で言った。
「急に何を馬鹿なことを言ってるの。大学はどうするの?」
「明京大学はもうあきらめたわ」
「入るため一生懸命に頑張ってきたじゃないの。今度は母さんが頑張る番だがね。寄付金のことなんか気にするんじゃないよ。すぐに払うから振込先を教えなさい!」
花織が入学案内を出し渋っていると和子はイライラして怒った。
「お父さんの分まで私が頑張っているのに母さんじゃ頼りにならないと言うの!」
和子の気迫に負けそうになりながら反論した。
「私だってよくよく考えて決めたつもりよ。もう遅いわ」
「そんなの許しません!」と和子はキッパリ言い切るとキッチンを出て行った。

花織は自室に戻ると机の上に置いてあった明京大学の入学案内がすでになくなっていた。きっと和子が持ち去ったのだろう。
窓の外はオレンジ色の雲が次第に暗くなっていった。
花織は心の中で静かに母に詫びた。

翌日、家族で朝食を摂っている時、和子がポツリと言った。
「入学金の支払期限、もう過ぎてしまっていたのね」
花織はうつむいたまま消え入りそうな声で応えた。
「だから昨日、もう遅いと言ったのはそういうことなのよ」
二人の会話が途切れると食卓に鳥のさえずりだけが微かに聞こえてきた。
その静寂を破るように兄の正弥が頭を下げて詫びた。
「跡を継ぐのは本来、僕がするべきなのに。花織に全て背負わせてしまってゴメン」
「謝ることはないわ。お兄ちゃんは獣医になるのが夢でしょ」
「しかし、それでは……」
「必ず立派な獣医になってね。私は花見野山荘を守りたいの。私の人生は私が決めるわ」
その決意の言葉に和子も正弥も押し黙った。
花織はトースターに入れたまま忘れてしまった食パンに気が付いてトースターを開けた。
焦げ臭い匂いが立ち上った。
もう後戻りできない言葉を言ってしまった。これで良いんだ。良いんだよね。と自分に言い聞かせた。

第11話へつづく
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  • 第11話 急げ、駅弁を買いに

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