第8話 ネグレクトじゃないのか?③

文字数 1,712文字

じゃあ、副住職さん。

私が読んでいない『ボヴァリー夫人』からお願いします。


あ、医学的なネタバレは止めてね。

そこは多分、説明できないから安心してください。


まず、エンマ・ボヴァリーはあまり子どもを望んでいなかったフシがある。

妊娠中にだんだん期待していったけれど、それは男の子を考えていて。

結果的に女の子が生まれる。

あー、うちも弟が生まれたときににみんなが嬉しそうで、

なんか、私が要らない子みたいな感じがした。

そ、そんなことは、ないんじゃない?


でも、まあ、そういうのは……。

ごめん、話逸らしたね。
その子は、近くの木工職人の家に里子に出される。



さっそく?
これは当時のフランスでは普通のことのようで、本文でもあっさりと書いてある。


(参考)

HP

フランスぷらぷら「子供を親が育てなかったフランス」

出産から六週間の安静期間があるのだけど、それが経つか経たぬかの頃、

娘に会いに行っているから、愛情は芽生えていると考えていいんだと思います。


で、夫以外の男性、まずはレオンという人だが、

その目を気にし始める頃、突如その娘を引き取る。

さっきのHPだと、6歳くらいまで預けていてもおかしくないところ、

おそらくまだ1歳にもならないうちに家に帰ってきた。

えっ?


全然いいお母さんじゃない?

里佳、やっぱり子どもね。


これは自分で自分を誤魔化すための行動だわね。

そうでしょ、副住職さん?


(おお、R12はどうなったんだ?)


後々まで読むと、そういう行動なのかな、と思えますね。

里佳ちゃん、分かる?

先生に怒られた日は、家で言うことを聞く、みたいな?
そうだね、そういう感じ。

自分で自分の行動を浄化する。

その方が難しい。
その後、まとわりつく子どもを「うるさいわね!」と払いのけたり、

相手の男と、じっくりとその日の別れの挨拶をするために向こうへやったり。


子どもであるベルトからみると、行動が不安定だね。

まあ、虐待とかじゃなくても、毎日同じようにかわいがる、

っていうのは無理でしょ?

そうよね。

好きな子に意地悪したりもするし。

それはちょっと別だけど……


え? 里佳、好きな子いるの?

あー、また話を逸らしてしまいました。


お師匠、すみません。

続きをお願いします。

里佳ちゃんの話も気になるけど、続けようか。


話は進んで、二人目の男、ロドルフ。

エンマはそこから、ロドルフと二人で逃げる計画を出すんだけど、

その時ロドルフが尋ねる。

「で、子供は?」


当然の質問だと思うし、これによってロドルフの行動も変わり得る。

エンマはしばらく考えて

「わたしたちが引き取りましょう、仕方ないけど!」

と答える。

ロドルフは「何て女だ」と。



しばらく考えているから、

一緒に逃げたい男の前で、咄嗟に言ったセリフではない。

ということよね。


なるほど、「何て女だ」ね。

この時、男性はきっと心が離れていくのよね。

自分をそこまで愛されると重くていやだ、とか。

反社会的で利己的だ、とか。

その原因を作っているくせにね。

(舞衣ちゃん、いろいろ苦労しているのかな……)


おほん。

このロドルフというのはいわゆるプレイボーイで、

エンマを魅了するのも、突き放すのもお手の物みたいだ。

副住職さんは、職業的にもそんな人じゃないでしょ?
当然です!
ねー、続きは?


ベルトちゃんはどうなったの?

ロドルフからの返事は無いのだけれど、

もう次の日からエンマは、老夫人、

つまりシャルルのお母さんがびっくりするくらい

良い嫁、良い妻、良い母になる。


さっきの話と繋がる訳ね。
ところがそのロドルフが、裏切る。

一人でルーアンという町へ逃げてしまう。

まあ、そうよね。


そしてショックのあまりエンマは倒れてしまうんだ。

こうなるとベルトはまた預けられ、何も知らいない夫シャルルが懸命に看病する。

体調が戻ると、ベルトも帰ってくる。

それはむしろいいシステムかもね。



私なら、お母さんを一緒に看病したいなあ。
たぶんだけど、多くの日本のお母さんは、

子どもにも夫にも日常生活を続けさせようとするわね。

しかも、普段の家事も大概続ける……。


病気になれないのよ、この国の母は。

昔だから古臭くて悪い制度だという訳ではないですよね。
おっ。電話か?

ちょっと失礼します。


(さりげなくトイレ休憩を作るのが大事なのだ)

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登場人物紹介

作者投影。文章修行しているつもり。

本職は、寺院の副住職(跡継ぎ)。未婚。

全く似ていませんし、職業も勿論違います。

近所の女の子。里佳。

話し相手になってくれる優しい才女。

拙作「転校したとです。」の山田さんイメージです。

舞衣。里佳の従姉。医学科の学生さん。

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