第6話 ネグレクトじゃないのか?①

文字数 909文字

「風と共に去りぬ」って名前は知ってるよ。


お母さんが女子高生の頃、読んだらしい。

おお、陽子さん。


さすがだなあ。

私も陽子おばさんに勧められて、読んだはずよ。


南北戦争っていう、アメリカの中で起きた戦争があって、

黒人奴隷をどうするかっていう争いということになっているけど。


あ、里佳?

リンカーン大統領は、知っているわよね?

人民の、人民による、人民のための……。


の人ね。その頃だったんだ!

(アメリカ合衆国は、ずっと分断したままなんだよなあ)



それで、主人公のスカーレットはね。

まだ17歳で結婚するんだけど、大好きだった男の人は友達のメラニーと結婚しちゃったの。

それで、そのメラニーのお兄さんと結婚する。


なのに、そのお兄さんが戦争で死んじゃうのよね。

しかも、その子供がスカーレットのお腹に……。


戦争って考えるから、悲惨だけどさあ。。


昼ドラだとそんなの普通の設定だわね。

(うむむ、里佳ちゃん……)
まあ、そう言わずに。


その子、ウェードっていう子なんだけど、

母になったスカーレットはこの子に愛情を注げない。

あれ?


愛情が芽生えてどうこう、っていう展開じゃないのね?


何か、ウェードが可哀想。

それどころか、メラニーの子、

つまりスカーレットがもともと好きだった男、アシュレの子になるのだが、

そちらの方が可愛いとさえ思っているんだ。

えっ……


ちょっとそれ、ショックかも……。

自分の腹を痛めて産めば、愛情も勝手に生まれる、

という訳ではない、っていうことを示しているわね。


産婦人科や新生児科の実習に行くと、結構悲惨な実例を見るわ。

守秘義務だから、言えないけど……。

連れ子が実母に虐待される、という事例もあるからね。
なんか、怖いな。。
里佳のところは、陽子おばさんも、おじさんも仲良しだから大丈夫よ。


陽子おばさんは、お仕事忙しいの?

昼間だけの外来診察だから、私が帰る時はだいたい家にいてくれる。
陽子おばさんは、私の憧れだからね。


でも、私は、、

非常勤で外来だけの女医になるのは、うーん……

(おっ、舞衣ちゃん、将来を考えているのか。)


(寺の嫁が女医、とかサイコーじゃないか?)



参考 『風と共に去りぬ(一)~(五)』マーガレット・ミッチェル作、大久保康雄訳 新潮文庫
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登場人物紹介

作者投影。文章修行しているつもり。

本職は、寺院の副住職(跡継ぎ)。未婚。

全く似ていませんし、職業も勿論違います。

近所の女の子。里佳。

話し相手になってくれる優しい才女。

拙作「転校したとです。」の山田さんイメージです。

舞衣。里佳の従姉。医学科の学生さん。

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