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文字数 2,131文字
阪神高速の芦屋インターから姫路ジャンクションまでひたすら西へと走り、姫路ジャンクションから播但連絡道路に入る。そこから和田山インターチェンジまで北上して出来たばかりの北近畿豊岡自動車道へと入る。今のところ、北近畿豊岡自動車道は但馬空港インターチェンジが終点なので、そこで長い高速道路を降りることになる。相変わらず、豊岡という町は寂れている。例えば、今バイクで通っている場所は、昔はよくある地方都市と言った感じでそれなりに賑わいを見せていたが、若い人がどんどん神戸や西宮へと流出してしまい、現在では不動産会社の「入店者募集中」の看板が目立つようになってしまった。辛うじて、携帯電話ショップは車が多数停まっているが、それはお年寄りがスマホの操作に困っているからなのだろう。ファスト風土の残骸から水路を抜けて住宅街へと入り、地元でも有数の進学校である高校のグラウンドを横切り図書館の前を通る。それから、寺社仏閣が多数並ぶ昔ながらの住宅街を通り抜けた先に僕の実家はある。ちなみに、この寺社仏閣が並ぶ通りは花街の名残であり、昔はスナックや居酒屋が多数営業していた。まあ、今ではすっかり残骸と化しているのだけれど。
とりあえず、実家のドアホンのチャイムを鳴らす。
「ああ、絢奈だ。訳あってこっちに戻ってきた」
ドアホンから、女性にしてはやけに低い濁声が聞こえる。
「絢奈ちゃん、戻ってきたのね。今開ける」
解錠された先に、ショートボブの華奢 な女性が現れた。これが僕の姉の神無月麻衣 である。
リビングで、麻衣がアイスコーヒーを淹れてくれた。
「それにしても、どういうことなの?」
「お姉ちゃんならあの事件のことを知ってるんじゃないかって思って」
「そりゃ、治安が良いはずの田舎町でこんな事件が起きたら騒ぎにもなるよ。ほら、ここは変な事が起きるとすぐ噂になるから」
「確かに」
「それで、アンタはその事件を追ってはるばる豊岡までやって来たって訳?」
「まあ、そんなところかな。杉本先生とも約束を取り付けている」
「アンタ、面白いねぇ。アタシでもそこまでの行動力は持ってないな。感嘆するよ」
「でも、事件の事は気になってるでしょ?」
「それはそうだけど……」
「とりあえず、僕は杉本先生に連絡を取る。とりあえず部屋に入らせてくれ」
「はいはい、分かってますよ。ああ、リスカはしないでね」
「する訳無いだろ」
僕は、久々に自分の部屋へと入った。住んでいるアパートでもそうだが、僕は部屋の片付けが苦手だ。実際、アパートでは本が散乱している。京極夏彦と舞城王太郎のノベルス、それに鬼退治の漫画と東京卍リベンジャーズは本棚に仕舞ってあるが、資料として出した本や積読している本は本棚に仕舞っていない。たまには掃除しなきゃいけないのは分かっているのだけれど、掃除する暇があったらデザインや小説に取り掛かってしまう。それは悪いクセだ。それだけじゃない。僕はロボットアニメが好きなのでそのアニメに登場するプラモデルの箱も溢れている。少しずつ整頓はしているのだが、上手く行かない。その点、僕の実家の部屋は整理整頓が行き届いている。麻衣曰く「アンタはモノが多すぎる」とのことだが、いつでも僕が戻ってきても良いようにこうして掃除はしているのだろう。
とりあえず、僕はスマホで杉本先生に連絡を取り付けることにした。
――杉本先生ですか
――とりあえず豊岡に来ました
――どこかで話が出来ないでしょうか?
まあ、これで大丈夫だろう。後は連絡が来るのを待つだけだ。連絡を待っている間、僕はサブスクでいろんな曲を聴いていた。芦屋に住んでいる以上、FM802が入るので普段はそれで間に合うのだけれど、矢張り豊岡はFM802が入らない。辛うじてKiss-FMは入るが、正直言ってつまらない。
何曲かサブスクを垂れ流していると、杉本先生から連絡が入ってきた。
――ああ、絢奈ちゃんか
――とりあえずコメダに来てくれ
――そこなら誰にも気付かれない
コメダと言えば、あそこか。豊岡のコメダは所謂「よくある地方都市」の大通りの中にある。コメダの向かい側にあるのは巨大なホームセンターで、豊岡に住んでいた頃はそこのホームセンターに行く前によくコメダに寄っていたような気がする。とりあえず、僕はバイクでコメダまで向かうことにした。
コメダの駐車場の前で、杉本先生が待っていた。
「絢奈ちゃん、善く来たな」
「杉本先生、当然だ。あんなメッセージを受け取った以上来るしかない」
「ハハハ、それは結構。とりあえず、僕はヘビースモーカーだから喫煙室の方に入る……と言いたいが、残念ながら今は全室禁煙だ。まあ、喫煙室の名残がある場所なら人も少ないし話をしても気付かれないだろう」
「そうだな」
喫煙室だった場所はドアで仕切られている。確かに、僕と杉本先生以外誰もいない。もしかしたら、長年の染み付いた煙草 の匂いで避けていくのだろう。僕は、亡くなった母親がヘビースモーカーだったので常に副流煙を吸っている状態だったのだが、僕は煙草を吸わない。故に、煙草の匂いはあまり好きではない。それはともかく、僕はアパートから持ってきた自分のダイナブックを開いて話を進めることにした。
とりあえず、実家のドアホンのチャイムを鳴らす。
「ああ、絢奈だ。訳あってこっちに戻ってきた」
ドアホンから、女性にしてはやけに低い濁声が聞こえる。
「絢奈ちゃん、戻ってきたのね。今開ける」
解錠された先に、ショートボブの
リビングで、麻衣がアイスコーヒーを淹れてくれた。
「それにしても、どういうことなの?」
「お姉ちゃんならあの事件のことを知ってるんじゃないかって思って」
「そりゃ、治安が良いはずの田舎町でこんな事件が起きたら騒ぎにもなるよ。ほら、ここは変な事が起きるとすぐ噂になるから」
「確かに」
「それで、アンタはその事件を追ってはるばる豊岡までやって来たって訳?」
「まあ、そんなところかな。杉本先生とも約束を取り付けている」
「アンタ、面白いねぇ。アタシでもそこまでの行動力は持ってないな。感嘆するよ」
「でも、事件の事は気になってるでしょ?」
「それはそうだけど……」
「とりあえず、僕は杉本先生に連絡を取る。とりあえず部屋に入らせてくれ」
「はいはい、分かってますよ。ああ、リスカはしないでね」
「する訳無いだろ」
僕は、久々に自分の部屋へと入った。住んでいるアパートでもそうだが、僕は部屋の片付けが苦手だ。実際、アパートでは本が散乱している。京極夏彦と舞城王太郎のノベルス、それに鬼退治の漫画と東京卍リベンジャーズは本棚に仕舞ってあるが、資料として出した本や積読している本は本棚に仕舞っていない。たまには掃除しなきゃいけないのは分かっているのだけれど、掃除する暇があったらデザインや小説に取り掛かってしまう。それは悪いクセだ。それだけじゃない。僕はロボットアニメが好きなのでそのアニメに登場するプラモデルの箱も溢れている。少しずつ整頓はしているのだが、上手く行かない。その点、僕の実家の部屋は整理整頓が行き届いている。麻衣曰く「アンタはモノが多すぎる」とのことだが、いつでも僕が戻ってきても良いようにこうして掃除はしているのだろう。
とりあえず、僕はスマホで杉本先生に連絡を取り付けることにした。
――杉本先生ですか
――とりあえず豊岡に来ました
――どこかで話が出来ないでしょうか?
まあ、これで大丈夫だろう。後は連絡が来るのを待つだけだ。連絡を待っている間、僕はサブスクでいろんな曲を聴いていた。芦屋に住んでいる以上、FM802が入るので普段はそれで間に合うのだけれど、矢張り豊岡はFM802が入らない。辛うじてKiss-FMは入るが、正直言ってつまらない。
何曲かサブスクを垂れ流していると、杉本先生から連絡が入ってきた。
――ああ、絢奈ちゃんか
――とりあえずコメダに来てくれ
――そこなら誰にも気付かれない
コメダと言えば、あそこか。豊岡のコメダは所謂「よくある地方都市」の大通りの中にある。コメダの向かい側にあるのは巨大なホームセンターで、豊岡に住んでいた頃はそこのホームセンターに行く前によくコメダに寄っていたような気がする。とりあえず、僕はバイクでコメダまで向かうことにした。
コメダの駐車場の前で、杉本先生が待っていた。
「絢奈ちゃん、善く来たな」
「杉本先生、当然だ。あんなメッセージを受け取った以上来るしかない」
「ハハハ、それは結構。とりあえず、僕はヘビースモーカーだから喫煙室の方に入る……と言いたいが、残念ながら今は全室禁煙だ。まあ、喫煙室の名残がある場所なら人も少ないし話をしても気付かれないだろう」
「そうだな」
喫煙室だった場所はドアで仕切られている。確かに、僕と杉本先生以外誰もいない。もしかしたら、長年の染み付いた