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文字数 1,300文字

 家に帰ると、麻衣がスマホのゲームで遊んでいた。
「善く飽きないな」
「まあね。パズルゲームなんてそんなもんよ」
 麻衣が遊んでいたスマホのゲームは、同じキャラクターをつなぎ合わせて消すといるよくあるパズルゲームだった。――つなぎ合わせる。()()ぎ。接続。まあ、麻衣に対して事件の事を一から説明するのは()しておくか。それ以前に、麻衣は既にこの事件のことを知っているだろうし。
 部屋に戻った僕は、ダイナブックの電源を入れた。今までの事件のこと、17年前のこと、そして、今日の晩ごはんのこと。色んなことを考えながら、検索サイトであれこれ調べていた。――フランケンシュタインか。多分、古い映画は著作権が切れているだろうし動画サイトでも無料で見られるだろう。そう思って調べたが、矢張り脈ナシだった。かといって、サブスクで見る程でもない。ここは、青空文庫で原作を読むか。
 ――読み終わったのは、30分程だっただろうか。まあ、昔の小説だから当たり前か。そういえば、怪物の誕生日は「11月のあるものさびしい夜」だったか。17年前の11月といえば――僕は、何をしていたのだろうか? 確か、京都へ課外学習に行っていたか。その時のメンバーは――沙織ちゃん、櫻子ちゃん、梓さん、亜美さん、菜月ちゃん、杏子ちゃん、そして、遥さんか。――あれ? 今回の事件の被害者って……課外学習のメンバー? ルートは確か、伏見神社をスタートして清水寺に行って、最終的に二条城がゴールだったか。所謂「黄金ルート」である。その過程でどんな寺社仏閣に行ったかは忘れたが、矢張り伏見神社と清水寺と二条城は覚えていた。清水寺の御神籤で「大凶」を引き当ててしまったのは、ある意味自分の運命だと思っている。まあ、神様に運命を決められるぐらいなら、自分で運命を決めたほうがまだマシだろうけど。――そういえば、卒業アルバムには課外学習の写真もあったな。僕は、卒業アルバムから「2年生」の時の写真を探すことにした。
 卒業アルバムに貼られている写真は、淀んだ水の上澄(うわず)みに過ぎない。それは僕がスクールカーストで下の方だったから善く知っている。どうせ僕の写真なんて使われている訳がないだろう。そう思っていたが、課外学習の写真の中に、僕の顔が写っているのが見えた。相変わらず、死んだ魚のような顔をしているな。そして、僕は課外学習の写真をスマホで撮影した。何かの証拠になるんじゃないかと思ったからだ。それにしても、みんな死んでしまったな。この写真で生きているのは、僕と沙織ちゃんだけか。もしかしたら、櫻子ちゃんも生きている可能性があるが、多分、生きていたとしても犯人だろう。櫻子ちゃんがどういう目的でこんなことをしたのかは考えたくないが、何か目的があって殺人を犯したのは確かだろう。
 スマホの時計を見ると、午後11時を指していた。道理で眠いはずだ。なんだか、今日は長い1日だったな。明日、どんなことがあるかは分からないけれども、今日よりも良い一日にしたい。それに、これ以上友達が死ぬのは見ていられない。
 ――沙織ちゃん、櫻子ちゃん、無事でいてくれ。そして、罪を犯さないでくれ。
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  • Phase 01「僕」という存在

  • 1
  • 2
  • 3
  • Phase 02 山奥の地方都市

  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • Phase 03 見立て

  • 8
  • 9
  • 10
  • Phase 04 追憶の中学2年生

  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • Phase 05 フランケンシュタインの怪物

  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • Phase 06 オール・リセット

  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • Final Phase 僕の遅すぎた青春

  • ***
  • 参考資料

登場人物紹介

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