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文字数 1,620文字

 翌朝。僕はスマホのアラームが鳴る前に目を醒ました。なんというか、善く眠れなかったのだ。スマホの時計を見ると、午前5時を指していた。流石にこの時間にリビングへ行くのはどうだろうと思いつつ、喉が渇いていたので冷蔵庫でアイスコーヒーを流し込んだ。ついでに食パンが残っていたのでトースターで焼いて、バターを塗って食べた。それにしても、この事件も混迷を極めているな。とうとう6人目の殺人が起こったことによって、人体のパーツが全て揃ってしまったことになる。まるで、フランケンシュタインの怪物だ。しかし、犯人は本当に人造人間のようなモノを作るつもりなのか? 僕には想像ができない。
 やがて、スマホのアラームが鳴ると同時に麻衣がリビングへと降りてきた。
「アンタ、随分と早起きね。何時だと思ってんのよ」
「6時30分」
「そりゃそうだけどさ、いくら何でも早起きが過ぎるよ」
「正直、眠れなかったんだ」
「まあ、アンタの友人を狙った事件が起きてると当然だよね。気持ちは分かる」
「お姉ちゃんは、人を殺したことがあるのか」
「殺したことなんてないよ。確かにゲームの世界では人を殺すことがあるかもしれないけど、実際に人を殺すことは犯罪だ。日本の法律でも定められてるからね。まあ、昔の人間は『戦争』という愚行で人を殺していたらしいけど」
「戦争か……今でも、パレスチナとイスラエルは戦争をしているのだろうな」
「そうね。ニュースになっていないだけで、小さな戦争から大きな戦争まで、色んな戦争が起きてんのよ。仮に日本が戦争に走ったら、どうするんだろうな」
「今はそんな事を考える時じゃないな。まあ、戦争に走ってしまったら考えなきゃいけないけど」
 ――「生きている」とは、そういうことなのか。日本は平和ボケしているというが、逆に今の日本にとって戦争を行う理由がないとも言える。昔の戦争は、資源の争いだったり、民族間の争いだったりした。しかし、「サスティナブルな世の中」が叫ばれて久しい昨今では、資源は節約して民族も多様性が求められるようになった。それは、戦争への抑止力になっているのかもしれない。まあ、行き過ぎた多様性の押し付けは逆に良くないと思うけど。
 そういえば、遺体の胃の内容物は調べ終わったのだろうか? 刑事さんの話によると、「約1日かかる」と言っていたが、そろそろ調査が終わっても良さそうである。――スマホが鳴った。
「もしもし、刑事さんですか?」
「はい。兵庫県警捜査一課の浅井仁美です。遺体の胃の内容物についての調査が完了しました」
「それで、結果はどうだったんですか?」
「矢っ張り、神無月さんの言う通りでした」
「ということは、遺体は毒殺されていたと」
「そうなりますね。6人とも、胃の内容物から青酸カリが検出されています」
「青酸カリですか。いつどこで何を食べさせられたのかは分かりますか?」
「片桐さんの胃の内容物が消化されていなかったので調べたんですけど、おにぎりのようなモノが見つかっています」
「――なるほど」
「どうしたんですか?」
「僕、犯人の目的が分かったような気がします」
「それは本当ですか!?」
「本当です。とりあえず、沙織さんと一緒に話がしたいです」
「沙織さんって、あなたの友達でしたよね」
「そうです。多分、彼女も彼女で今回の事件の事を必死で調べていると思います」
「それで、私はどこに行けばいいんですか?」
「――中学校の体育館に来てほしいです」
「分かりました。そこでお待ちしております」
「ああ、それと、沙織さんにこれだけは伝えてほしいです。『君は潔白だ』と」
 刑事さんからの連絡を受けた僕は、沙織ちゃんにも連絡をした。

 ――さっき刑事さんから連絡があった
 ――被害者は全員毒殺された上で解体されていた
 ――沙織ちゃんは何も悪くない
 ――悪いのは、アイツだ

 僕の見解が正しければ、犯人の目星は付いている。仮令(たとえ)、それが悲しい結末だとしても、今の僕にとってはどうでも良かった。
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  • Phase 01「僕」という存在

  • 1
  • 2
  • 3
  • Phase 02 山奥の地方都市

  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • Phase 03 見立て

  • 8
  • 9
  • 10
  • Phase 04 追憶の中学2年生

  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • Phase 05 フランケンシュタインの怪物

  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • Phase 06 オール・リセット

  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • Final Phase 僕の遅すぎた青春

  • ***
  • 参考資料

登場人物紹介

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