第49話 投稿動画

文字数 707文字

 もしもし? あら久しぶり。
 いま? パソコンで動画見てる。
 ううん、映画じゃないよ。わたし最近、料理とか手芸とか工作? そんな動画にはまってんの。
 そうそう。手元映して作り方説明するやつ。見てると面白くてさ。
 別に女子力高めようなんて思ってないよぉ。そんなんもとから持ってるしさ、なんてね。
 でさ、こういうのってだいたいみんな顔出してないじゃん。作り方見せてるんだから当たり前なのかもしれないんけど、今見てる動画、顔見えてるんだよね。
 わざと? 
 ははは、ちがうちがう。そんなんじゃなくて、工作に使ってるツルツルテカテカのシートに作者の顔が反射しちゃってるんだよ。編集中、気付かんかったんかな――顔出しNGならヤバいよね。
 そっ。丸映り――でもね、この顔ちょっと変なんだよね。あ、ブスっていう意味じゃないよ。ほんと、ほんと。けなしてないって。わたしそういうの言わない人だから――そうだったっけ? 覚えてないわ――
 まあ薄っぺらいシートが歪んでそう見えてるだけかも――にしてもすごく変――っていうか、怖い顔――ん、これホント 歪んでるから、だよね?
 え、やだっ。顔の後ろにも顔がいっぱいある? ちょっ、ちょっと待って、キモいからパソコン切るわ――
 うん、もう消したよ――えっなに? だからちゃんと切った――
 ウソっ――わ、わたしの顔――画面に反射してるわたしの顔が――さ、さ、さっきのと一緒――
 嘘じゃないよっ。何笑ってんの? 
 いやだっ後ろにも顔が――あ、やだっ、やだっ、やだっ、や――――

 悲鳴が聞こえた後、中学時代にわたしをひどくいじめた女の声はもう二度と聞こえてこなかった。
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