第１００話　厄日

　きょうは厄日だと言うので、わたしは一歩も外に出ませんでした。
　もちろん災難を避けるためです。
　屋内にいても、二階の上がり下がりの足元に気を付け、包丁や鋏を使わないなど、すべてにおいて注意深くしていました。
　本当はきょう、友人たちと旅行の約束をしていたのですが、厄日だから仕方ありません。
　今頃みんなで楽しく老舗旅館の豪勢な夕食でも食べているかしら。
　そんなことを考えていると、ごおおおという轟音と、めりめりという激しい破壊音が聞こえ、それが何なのか理解する前に壁を突き破ったトラックがわたしの目の前に迫ってきました。
　ああ、こんなことなら旅行に行っておけばよかったわ。
　一歩も外に出なくても車の事故に巻き込まれるくらいなら――