十八 明美と僕の守護霊
文字数 2,115文字
翌朝(火曜朝)。
目が覚めた。昨夜の事は夢だったのだろうか?最後の会話は明美との会話だったような気がする。玲がほんとうに出てきたのだろうか?
そう思って、抱きしめている明美を見た。ふんわりした薄茶の長い髪は玲と同じだ。閉じたまぶたから伸びている長いまつげ。これも玲に似ている。何よりもはっきりしたのは、明美が僕の子どもを産みたいと話した事だ。これで、明美が玲の母親になるのを宣言した事になる。
「もう、起きたの?」
僕が目覚めたのに気づいて明美が目覚めた。
「まだ五時だ。もう少し寝てるといい・・・」
「うん、抱きしめててね・・・。
夢みたよ・・・。しょうちゃんの子どもを産みたいと話して、寝てからすぐに・・・。
私、子どもを抱いて、しょうちゃんに抱きしめられたまま眠ってた・・・。
子どもの名前、玲と言ったよ・・・」
僕は驚いた。あれは夢じゃなかった。昨夜、玲は僕のところに出てきたんだ。そして、明美のところにもいた。明美も玲を感じてたんだ・・・。
そう思ったが、明美に玲の事を話さず、僕はいつもの朝のように、明美を抱きしめて肩と首をさすった。
「そうか・・。もう少し眠ろうね」
「うん・・・」
明美は眠った。
今日は冬休み三日目。年末の片づけと休み明けの試験に備えて勉強するだけだ・・・。
そう思いながら、抱きしめた明美の胸を見た。玲が明美に抱かれて眠っている・・・。
僕は驚くと同時に、玲の存在を確認できて、ほっと安心した。やはり、明美も玲の存在を感じている・・・。そう思っている間に眠っていた。
六時半過ぎに目覚めた。明美が僕に抱きついた。
「しょうちゃん、わたし・・・」
「ちょっとまって。ちょっとだよ」
「うん・・・」
『玲。玲のこと、お母さんに話していいか?』
『うん、いいよ。あけみお母さんが、玲のお母さんになるって宣言したからいいよ』
抱きしめた明美と僕の胸のあいだから、クリクリした巻き毛の玲が出てきた。
『どうやって説明したらいい?』
『さいしょに、お母さんの話を聞こうね。
それから、あの難題門のことから説明してあげてね』
『わかりました。そしたら、お母さんの話を聞こうね』
『は~い。あたし、ふたりの胸のあいだにいるよ~』
玲は小さくなって明美と僕の胸のあいだにもぐりこんだ。
「明美の話を聞くよ。何?」
「奇妙に聞えるかも知れないけど、しょうちゃんと私の子どもがいる気がするの。
まだ産まれてないけど、心が存在してて、昨夜からしょうちゃんと私のところに来てる気がするの。妊娠したって事じゃないよ。
名前は玲だよ。
玲はしょうちゃんが卒業するまで、産まれるのを待つって言ってるの」
「うん、そうだね。これから話す事をよく聞いてね。明美と僕の玲の事だよ。
僕は玲から、お母さんを探してくれと頼まれてた。お母さんを探すのに、条件があった。明美が、玲のお母さんになると宣言しないと、玲のお母さんになれなかったんだよ。
明美が僕の子どもを産みたいと宣言したから、玲が明美と僕の子どもになれたんだ。
玲から、お母さんを探してくれと頼まれてた事を、僕は退院してから忘れてた・・・。そうじゃないな。忘れるようにされてたみたいな気がする・・・・」
僕はあの難題門に立った時からの出来事を全て話してあげた。
「うん、なんとなくそんな感じがしてた。父がいろいろ世話を焼いて、しょうちゃんと私を会わせてくれたと思ってたけど、玲だったんだね・・・・」
『えへへ。わかっちゃったね』
『玲がいろいろしてくれたから、僕が明美に会えたんだね』
『省吾といっしょにあたしのお母さんを探したよ。いつも省吾といっしょだったよ。
こんどから、あけみお母さんもいっしょだよ。ふたりを守らなくっちゃね』
玲が明美と僕の胸の間から出てきた。
「えっ、玲ちゃんが私たちの守護霊になるの?」
「明美、玲が見えるのか?」
「実は、昨夜から、なんとなく見えるの。今は、はっきり見えるよ。
玲ちゃんは、私たちだけに見えるのね?」
『そうだよ~。ほかの人に話しちゃダメだよ。誰も信用しないよ』
「わかりました。玲ちゃん、ご飯はどうしてるの?」
明美は玲の空腹を心配している。
『だいじょうぶ。ふたりが食べるとき、あたしも食べてるよ。特別にあたしのを用意しなくていいよ。あたし、ふたりの心にいるんだあ~。だから、仲良くしててね。そうすると、あたしの心も大きくなれるよ』
「わかったわ。そしたら、起きて、ご飯にしようね。いつもどこにいるの?」
『今までは、省吾の肩だよ。こんどから、あけみお母さんの胸にいるね!』
「玲は産まれる前の魂なのね。そして私たちの守護霊なのね」
『うん、ふたりを守んないと、あたしが産まれないんだ~。
こんどは、あけみお母さんと省吾が良き人生を歩めるようにしなさいって、美具久留の爺ちゃんがそういったよ』
「どういうことだ?」
『美具久留の爺ちゃんは、守護神だよ~』
「わかりました。よろしくね。ほんとに、しようちゃんとひとつになれてよかった」
明美は胸を押さえて納得している。玲を抱きしめているのだ。
「さあ、三人で起きよう・・・」
僕は抱きついている明美と玲とともに起きあがった。明美も玲も笑っている。
目が覚めた。昨夜の事は夢だったのだろうか?最後の会話は明美との会話だったような気がする。玲がほんとうに出てきたのだろうか?
そう思って、抱きしめている明美を見た。ふんわりした薄茶の長い髪は玲と同じだ。閉じたまぶたから伸びている長いまつげ。これも玲に似ている。何よりもはっきりしたのは、明美が僕の子どもを産みたいと話した事だ。これで、明美が玲の母親になるのを宣言した事になる。
「もう、起きたの?」
僕が目覚めたのに気づいて明美が目覚めた。
「まだ五時だ。もう少し寝てるといい・・・」
「うん、抱きしめててね・・・。
夢みたよ・・・。しょうちゃんの子どもを産みたいと話して、寝てからすぐに・・・。
私、子どもを抱いて、しょうちゃんに抱きしめられたまま眠ってた・・・。
子どもの名前、玲と言ったよ・・・」
僕は驚いた。あれは夢じゃなかった。昨夜、玲は僕のところに出てきたんだ。そして、明美のところにもいた。明美も玲を感じてたんだ・・・。
そう思ったが、明美に玲の事を話さず、僕はいつもの朝のように、明美を抱きしめて肩と首をさすった。
「そうか・・。もう少し眠ろうね」
「うん・・・」
明美は眠った。
今日は冬休み三日目。年末の片づけと休み明けの試験に備えて勉強するだけだ・・・。
そう思いながら、抱きしめた明美の胸を見た。玲が明美に抱かれて眠っている・・・。
僕は驚くと同時に、玲の存在を確認できて、ほっと安心した。やはり、明美も玲の存在を感じている・・・。そう思っている間に眠っていた。
六時半過ぎに目覚めた。明美が僕に抱きついた。
「しょうちゃん、わたし・・・」
「ちょっとまって。ちょっとだよ」
「うん・・・」
『玲。玲のこと、お母さんに話していいか?』
『うん、いいよ。あけみお母さんが、玲のお母さんになるって宣言したからいいよ』
抱きしめた明美と僕の胸のあいだから、クリクリした巻き毛の玲が出てきた。
『どうやって説明したらいい?』
『さいしょに、お母さんの話を聞こうね。
それから、あの難題門のことから説明してあげてね』
『わかりました。そしたら、お母さんの話を聞こうね』
『は~い。あたし、ふたりの胸のあいだにいるよ~』
玲は小さくなって明美と僕の胸のあいだにもぐりこんだ。
「明美の話を聞くよ。何?」
「奇妙に聞えるかも知れないけど、しょうちゃんと私の子どもがいる気がするの。
まだ産まれてないけど、心が存在してて、昨夜からしょうちゃんと私のところに来てる気がするの。妊娠したって事じゃないよ。
名前は玲だよ。
玲はしょうちゃんが卒業するまで、産まれるのを待つって言ってるの」
「うん、そうだね。これから話す事をよく聞いてね。明美と僕の玲の事だよ。
僕は玲から、お母さんを探してくれと頼まれてた。お母さんを探すのに、条件があった。明美が、玲のお母さんになると宣言しないと、玲のお母さんになれなかったんだよ。
明美が僕の子どもを産みたいと宣言したから、玲が明美と僕の子どもになれたんだ。
玲から、お母さんを探してくれと頼まれてた事を、僕は退院してから忘れてた・・・。そうじゃないな。忘れるようにされてたみたいな気がする・・・・」
僕はあの難題門に立った時からの出来事を全て話してあげた。
「うん、なんとなくそんな感じがしてた。父がいろいろ世話を焼いて、しょうちゃんと私を会わせてくれたと思ってたけど、玲だったんだね・・・・」
『えへへ。わかっちゃったね』
『玲がいろいろしてくれたから、僕が明美に会えたんだね』
『省吾といっしょにあたしのお母さんを探したよ。いつも省吾といっしょだったよ。
こんどから、あけみお母さんもいっしょだよ。ふたりを守らなくっちゃね』
玲が明美と僕の胸の間から出てきた。
「えっ、玲ちゃんが私たちの守護霊になるの?」
「明美、玲が見えるのか?」
「実は、昨夜から、なんとなく見えるの。今は、はっきり見えるよ。
玲ちゃんは、私たちだけに見えるのね?」
『そうだよ~。ほかの人に話しちゃダメだよ。誰も信用しないよ』
「わかりました。玲ちゃん、ご飯はどうしてるの?」
明美は玲の空腹を心配している。
『だいじょうぶ。ふたりが食べるとき、あたしも食べてるよ。特別にあたしのを用意しなくていいよ。あたし、ふたりの心にいるんだあ~。だから、仲良くしててね。そうすると、あたしの心も大きくなれるよ』
「わかったわ。そしたら、起きて、ご飯にしようね。いつもどこにいるの?」
『今までは、省吾の肩だよ。こんどから、あけみお母さんの胸にいるね!』
「玲は産まれる前の魂なのね。そして私たちの守護霊なのね」
『うん、ふたりを守んないと、あたしが産まれないんだ~。
こんどは、あけみお母さんと省吾が良き人生を歩めるようにしなさいって、美具久留の爺ちゃんがそういったよ』
「どういうことだ?」
『美具久留の爺ちゃんは、守護神だよ~』
「わかりました。よろしくね。ほんとに、しようちゃんとひとつになれてよかった」
明美は胸を押さえて納得している。玲を抱きしめているのだ。
「さあ、三人で起きよう・・・」
僕は抱きついている明美と玲とともに起きあがった。明美も玲も笑っている。