第20話 ペンは剣より強し① 紙と筆と心意気
文字数 1,029文字
オスマン帝国の官僚たちは、いろいろ書きまくっていた。東洋文庫オスマン帝国史料解題が面白いので、是非参考にして下さい。
まあ、行政機関の文書主義は、マックス・ヴェーバーが指摘した通りです。現在では首相府オスマン文書館をはじめ、多様な書類が全国の文書館で保管されています。俺たち下級財務官がしょっちゅうお世話になるのは、租税台帳ですね。
オスマンの庭-詩、来客、盃持ち:US public domain
アラビア文字を書くには、適度に柔らかいペン先が必要だ。イスラムでは「文字を書く」という行為がとても重要なんだ。装飾に偶像を用いない代わりに、神の言葉を美しく書き表すことが、尊ばれる。カリグラフィー(書道)の発達も然りだな。
そうね…アラビア文字はくっきりとした輪郭が重要だから、綿状で吸水性のある東洋紙より西洋紙のほうが相性が良かったのかも。更に紙の表面を滑石で擦って、卵白やスターチを塗ってインク乗りをよくする工夫もされていた。この過程を『テルビエ』という。
葦ペンの先を削るための小刀を、カレム・トラシュといいます。マクター(筆切り台)にペン先を乗せて、窪みに沿って断ち切り整形し、インクを滴らせるよう縦に切れ込みを入れて、出来上がりです。これら筆記道具一式をしまう筆箱はクグールと呼ばれます。