第13話 太陽と月に背く男、オイゲン・フォン・サヴォイエン①

文字数 1,131文字

長きにわたる西側諸国とオスマン帝国との争いのなかで、『キリスト教国の盾』と呼ばれた将軍たちは何人かいます。ハンガリーのフニャディ・ヤーノシュ、ワラキアのヴラド三世(串刺し公)、そしてバーデン=バーデン辺境伯ルートヴィッヒ・ヴィルヘルム、オイゲン・フォン・サヴォイエンープリンツ・オイゲンですね。
同じ名前のドイツ巡洋艦が有って、こちらの方が日本では知られているかも知れないが…オイゲンはオーストリアの軍人だ。それでもって出身はフランスだ!
プリンツ・オイゲンの肖像: US public domain
そうですね。名前の通り、サヴォイア家の分家である、ソワソン伯のご子息です。“プリンツ”と呼ばれるのは、サヴォイア家男系子孫の、『公子』ということですね。でも作者は家系図が苦手ですよ!
サヴォワっていうのは、面白いところだよな。フランスとイタリアとスイスの一部に広がっている。サヴォイア公がサルディーニャ島を獲得してサルディーニャ王国となり、イタリア統一を先導したのもサヴォイア家だ。
また母方の大伯父はジュール・マザラン枢機卿でいらっしゃいますね。後のバーデン=バーデン伯とは父方の従兄弟同士でした。
母親はオリンピア・マンチーニだ。数多いるルイ十四世の愛人の一人で、太陽王の庶子ではないかという噂は当時から有った。
でも、フランスのライバルであったオーストリア軍の指揮を執ることになるんですよね。
ルイ十四世は、初めフランス軍に仕官を願い出た若いオイゲンの慎重な性格と、見栄えのしない体格も好かなかったと言われている。それにオランプの息子だ。
…オリンピア・マンチーニが十四世の寵愛を失ってから、ライバルの女性たちや夫、王までも毒殺しようとしていたと訴えられたんですよね。呪い師ラ・ヴォワザンの顧客だったことが災いです。
真偽のほどは分からんがな。オランプはフランスから追放され、子供たちは日陰もの扱いされた。遠征ばかりで留守がちだった父も亡くなり、末っ子のオイゲンは修道院に入れられていたらしい。
対してハプスブルグのレオポルト一世は、勤勉で敬虔な文人皇帝で、オイゲンを気前良くオーストリア軍に迎えます。オイゲンの血統の良さを利用できるという思惑も有ったようです。
時は第二次ウィーン包囲の始まりだ。大トルコ戦争が勃発する。
“I swore never to

enter it (this country) but with arms in my hands. I have kept my words.” 「私は誓った、二度とこの国には戻らない。あるとすればその時は、武器を携えているだろう。私は今だにこの言葉を守っている」。意思の強い方だったんでしょうね、でも何か哀しいですね…

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