第19話 いろいろな色の話

文字数 982文字

シンボルの話をしていた時にちょろっと出てきましたが、緑はイスラムにとって高貴な色ですね。現代でもイスラムを国教としている国々の国旗によく使われています。
そうね。オスマン帝国では赤も好まれた。“トルコ赤”と言われるくらいだからな。
ノーベル文学賞作家オルハン・パクムの『私の名は紅』は、オスマン帝国を舞台にした有名な小説ですね。作者はまだ読んでませんけど…
亀の調教師:US public domain、コントラストと比喩と細密の美しい名作。現在でも様々なモチーフに使われている
”トルコ赤”は茜からつくられる。これにミョウバンやクロムを混ぜて、多様な色合いを出した。ヨーロッパへも盛んに輸出されていたらしい。
紺色はカリンの樹皮、黄色や茶色は西洋茜、梨の葉、胡桃樹皮、榀の樹皮などで濃淡を付けたり、混色をつくりました。
緑色は桃の葉を煮出したところに、硫化銅を混ぜてつくる。黒はハッカの葉や根と、鉄屑を煮詰めて光沢を出す。『火約』でも言ってたけど、青はインドからインディゴが手に入るようになるまで、作るのが難しかった。
オスマン帝国の装飾品や衣装は色鮮やかなことで知られていますが、こうした染色技術の発達と、帝国の独特な色彩感覚にもあったのですよね。
ニュートンが光学について研究したのは十七世紀半ばだが、この色相環における対照の色、例えば赤と緑、黄と紫みたいな、補色を組み合わせるのがオスマン装飾の特徴なんだ。色の違いが大きいために、互いに引き立てることができる。
帝国では、宝石加工も重要な産業でした。
もっとも、アナトリアにはほとんど宝石鉱が無いのよね…属国・属領からの輸入に頼っていた。
“トルコ石”(ターコイズ)と呼ばれていても、トルコで産出するわけではないのですよね。イラン方面や北アフリカから帝国を経由して、ヨーロッパへ多く輸出されていたので、そのような呼称になったと言われています。
トルコ石は当時のヨーロッパで、お守りとしてもてはやされたようだからな。乳白がかったものや、【蜘蛛の巣】模様の入ったものなど、バリエーション豊かで美しい。
イェニ・サライ(現在のトプカプ宮殿)には、ナッカシュ・ハーメと呼ばれる大工房がありまして、帝国全土から集められた職人たちが、日々切磋琢磨して帝国の美を作り上げていました。
我々下級官吏に必要なのは、インクと紙だがな。次回はそんな話かな?
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