020 嫌な予感

文字数 7,286文字

 しまった! 菖は思わず口に手を当てる。剣崎の頭を撫でた手も、咄嗟に引っ込んでしまった。ベンチに座ってこちらを見上げる剣崎の目が睨んでいるような、悲しそうな、とても微妙な顔をしている。
 口走って剣崎に「しゃあねえなぁ、赤ちゃん」と言ってしまった。初めて会ったときから剣崎のことを、カモの赤ちゃんのようだと思っていた。口には出さなかったが、ずっと思っていた。言わないようにしていたのに。
 スケッチブックに描いた剣崎の絵を気に入ってくれたことは嬉しいが、駄々をこねて自分のものにしようと離さない姿が、もう赤ちゃんそのもので、つい……自然と頭を撫でてしまったのも、おそらく赤ちゃんに見えたから……と、そのまま弁解しようかどうしようか、目が泳いでしまう。
「あのさ」
 剣崎が溜息をついて言った。
「菖のほうが赤ちゃんみたいだから」
「はああ?」
 菖は思わず剣崎の胸ぐらを掴もうとするが、ひょいと避けられてしまった。
 剣崎は両腕を広げてベンチの背もたれに手を置くと、優雅に座り直した。長い脚まで組んで。
「いつも僕は、保護者みたいな目で菖を見てるもんね」
「はぁ⁈」
 あたしって、剣崎にとってそんな存在なわけ⁈
 訊きたいのに訊けなかった。多少のショックを感じながらも、菖は自分の幼稚さを把握できている。
 勝ち誇ったかのように座る剣崎の隣に置かれたスケッチブックを、菖はすかさず奪い返した。
「あっ!」
「もうやらん、あっかんべーっ!」
「だめだめだめ! まだくれなくていいから。貸してくれるって約束でしょ!」
 両手をこちらに向けて、下がった眉で泣きそうな顔の剣崎が、今度は膨れた頬を向けて口を尖らせる。
「ぶわっははは! もうそれ、完全に赤ちゃんやから!」
 菖は吹き出してしまった。剣崎も自分の両手に気づいて、照れ笑いしながらも引っ込められない。抱っこをせがむ可愛い赤ちゃんそのものだ。
「じゃあ赤ちゃんでいい。ねぇ、菖」
 ベンチに座ったまま手を広げる剣崎の元に、菖は一歩踏み出した。スケッチブックを渡そうとすると、菖の身体ごと抱き寄せられる。
「ひゃあ⁈」
「中庭だから静かにして」
 剣崎が胸の下あたりに顔を埋めてきた。待って、そこはおなかだから、やめて! 叫びたいのに、今のこの姿を誰かに見られてはいけない。見られたくない。
 スケッチブックで優しく、ぽんと剣崎の頭を叩く。本当はスパーンと叩きたい。菖は我慢した。
 背中で交差された剣崎の腕がさらに強くなる。
「ん……剣崎……息、できない」
 離してほしいのに、剣崎は笑ったままだ。
「首でも絞められてるの? 僕そんなこと、まだしてないよ?」
 顔を埋めたまま意地悪そうな声がする。
「まだって何!」
「ふふ、はははは」
 回された腕のせいで、くすぐったくなってしまう。どうにかなってしまいそうで、剣崎の肩に力を入れて身体を離そうと試みた。
 案外、すんなりと離れた。剣崎が満足したような笑顔を見せてくる。ニッコニコだ。完全に赤ちゃんやないか!
 今度は菖が怒った顔をして頬を膨らませた。そして笑顔の剣崎の、可愛い赤ちゃんのような白いほっぺたをぷにっと触る。
 いつの間にかスケッチブックは剣崎が手にしていた。
「菖、どうしたの。また顔、赤くしちゃってるね?」
 ほっぺたをつままれているのに、嬉しそうな顔でそんなことを言われても。ふと菖は疑問に思った。
「じゃあ剣崎は慣れてるんだ?」
 言いながら自然と口まで尖らせてしまう。
「ううん、初めて!」
 満面の笑みで自信満々な姿に面食らってしまう。頬から指を離すと、剣崎が立ち上がって菖の耳元までしゃがんだ。
「赤ちゃんだからね」
 そのワードだけなら笑いたいのに、囁くような声が思わず身体をのけぞらせた。そんな菖を見て、剣崎は意地悪そうな微笑みを浮かべている。
「菖は? 慣れてなさそうだけど」
「こんなへんなことしてくる奴、初めてやわ。剣崎のえっち!」
 口を尖らせたまま見上げて睨むと、口に手を当てて笑わないよう堪えている剣崎が「そろそろ行くよ」と中庭から校門へ向かって歩きだした。菖もついて歩く。
 ずるい、からかわれてる。剣崎ずるすぎる。
「なんっか最近、あたし、調子出ない!」
 剣崎の背中に不満をぶちまけた。振り向きながら剣崎は、声に出して笑っていた。
「くくくく、なんの調子?」
「なんか! 剣崎といると! ずるいよ、調子狂わされてばっか‼︎」
「わははは! ハッシくんだったかな、土門くんだったかな。言ってたよ? うるさい久野さんを止められるのは、剣崎くんだけだーって」
 剣崎は隣でお腹を抱えて笑っている。
「猛獣と猛獣使い、とかなんとか言ってるやつ?」
「そうそう、それ! 調子悪い理由なんじゃないかな?」
 なんっであたしが猛獣なんよ! おかしくない?
「おかしい! なんかあたし、変やわ!」
 もうすぐ校門というところで、菖は悔しくて両足をバタバタとさせた。ただ停まりながら走っている人になってしまう。
「あはっ! 菖はね、そのままでいいんだよ」
 剣崎も真似してその場でランニングを始めた。細くて長い脚がアスファルトを蹴りあげる。そして「よーい、どん!」と駆け出した。
「あ、ずるい!」
 あたしは走りながらまた笑ってしまい、すぐに息が切れてしまった。いつも笑って走れなくなるのは、こどもの頃からだ。


 部屋のベッドには常に、シャチの大きなぬいぐるみが鎮座している。すっかり菖の相棒だ。剣崎に模した黒猫のぬいぐるみは、枕元でおとなしく座っている。
 シャチのぬいぐるみを剣崎に貰ったとき。シャチの口先に剣崎がキスをした。菖もくちづけさせられて、また剣崎が同じところにキスをした。
 思い出すだけで身体中から火が出そうになる。
 中庭の赤ちゃん事件には笑ってしまうが、抱き寄せられて胸とおなかのあたりに顔を埋められたことも、叫びだしたいくらい恥ずかしい。
「でも剣崎は……あたしの保護者みたいな、気持ちなんかな?」
 シャチに問いかけてしまう。優しい目をしたシャチは何も言わない。
 菖はおそるおそる、シャチにくちづけた。そしてぎゅっと抱き締める。
 剣崎に触れられることは嫌じゃない。恥ずかしくてむず痒くて、どうしようもなくなって悔しくもなるが、剣崎とならくっついていたい。
 保護者とか言われて気落ちしてしまう反面、剣崎から求められているような感覚も伝わってくる。
 抱き締めながらシャチとコロコロと転がっていると、スマホが鳴った。剣崎はまだ練習中だ。スマホの画面にはコピーバンドのグループメッセージの通知が表示されていた。
 衣装をどうするか、という話だった。明日のカラオケ練習で話し合う予定だが、ある程度の方針を決めておこうということだった。
 カラオケ練習とは、カラオケルームにギターとベースを持ち込んで練習する。小さなアンプなら持ち込めるし、フリータイムで安く練習できるのだ。本格的なスタジオ練習もするが、価格を考えると何度も行けない。
 昔のツインボーカルの歌をコピーすることは決まっていた。菖と、美術科の男子の先輩がボーカルだ。あとは1年機械科の男子がギターとベースの4人編成。ドラム含めて基本の音色は、先輩のDTMによる打ち込みにした。先輩は歌いながらギターも持つ。
 菖も本来はギターを持つ役割なのだが、弾けない。父の和彦がギターやドラムをやっていたので触ったことはあるのだが、なぜかギターは弾けなかった。短い指のせいか、指板と弦をうまく抑えられない。和彦は「菖は握力なさすぎるからなぁ」とよく笑っていた。
 弾けなくとも、衣装とともにお飾りのギターを持つかどうか悩んでいた。エアギターってやつだ。和彦の部屋には、ギターが何本もある。
 グループメッセージにはまだ応えずに、菖は和彦にメッセージを送った。
『パパの部屋のギターって、どれなら使っていい?』
 ピンからキリまであるギターは、一番高級そうなもの以外どれも同じように見えた。
『菖ならゾーサンギターじゃないかな』
 返信はすぐにきたが、練習用のゾウさんの形をした小さめボディーのギターを薦められてしまう。
『そうやなくて。ギター持って高校の学祭で歌う予定』
 しばらくすると和彦から電話がきた。和彦が大好きな、昔のツインボーカルをコピーすることを話すと大喜びした。菖も生まれたときからずっと聴かされていて、大好きなツインボーカル。音楽を好きになった原点だと思う。
 ヴィジュアル系バンドが好きと言いつつ、昔懐かしのツインボーカルまで菖が詳しかったことでコピーバンドのメンバーと話が盛り上がり結成に至った。
「ギターは貸すけど、もう少しでパパ、そっち帰るから。そのときに選ぼうか」
 帰ってくるんかぁ。そう思ったとたん、学祭に来そうな気がして少し気が滅入った。
 コピーバンドのほうは、制服で歌うより衣装は申請しようということになっていた。
 パパが来るまでにある程度は決めておこう。そうしないと過剰なお節介が始まってしまう。


◇◇◇

 菖に「剣崎のえっち!」って言われて僕は、だらしないくらい腑抜けた顔になってしまったんじゃないか。可愛くて嬉しくて、ドキドキして、にやけてしまう。そしてなぜだか、もっともっといじめたくなってしまう。
 思い出しても笑いが止まらない。「こんなへんなこと初めて」だって! そのへんなことを詳しく聞きたい僕は、本当にただの変態だと思う。
 調子狂わされちゃうんだね、ほんと可愛いね。そんな菖が僕の性癖になっていること、どこまでわかってるんだろう?
 (けが)したくないのに、僕だけが穢したい。
 それにしても僕って、そんなに赤ちゃんなんだろうか?
 確かに顔が小さいからか、白い頬が幼い印象を出してるみたいだけど、最近の僕はだいぶかっこよくなってきたと思ってるのに。おかしいな。
 前から赤ちゃんって思ってたような、そんな口振りだった。菖の中の僕ってそんな印象しかないわけ?
 考えながら、中庭で抱っこをせがむような自分の姿を思い出して赤面してしまう。
「菖、そろそろ来るかな? 授業終わったよね」
 急に菖の名前が出てきて、僕は声を押し殺して驚いてしまう。篠宮さんが僕の隣の席に座った。
 今日の放課後は菖と3人で、後期のカリキュラムを組むことにしていた。
「このあいだの、浴衣のときに紹介してもらった人とはどうなったの?」
 篠宮さんに気になっていたことを訊いた。菖に訊いても良かったけど、からかうことに必死になってしまうせいか、ついつい忘れてしまう。
「剣崎、菖と花火見たんやろ?」
 急に質問返しをされて狼狽えてしまった。菖からどこまで聞いてるんだ? 僕が菖の後ろから、我慢の限界だったことまで話されてたらと思うと、少し恥ずかしい気持ちが出てくる。
「う、うん。見たよ、制作室から」
「あのときねぇ、私もその、ほのちゃんの友達の1個上の人と花火見とったんよ」
 篠宮さんの顔がニヤニヤしている。
「それはよかった。付き合うの?」
「うーん、それがなんかねぇ。いまひとつ、しっくりこんくって」
「そうなんだ」
 残念そうな、でも少し考え込むような顔をした篠宮さんが僕の顔を見た。
「ところで剣崎さ、真嘉比(まかび)さん……知っとるよね?」
 ドクッと音を立てて心臓が大きく跳ねた。息が詰まりそうになる。
 どうして、その名前を……? 僕は無言で篠宮さんを見た。篠宮さんは困ったような顔で僕を見ていた。
「お待たせ、お待たせぇ!」
 菖の明るい声が響いてきて、笑顔で教室に入ってくる。僕は戸惑った。今ここで、菖の前で、話す? 篠宮さんを見ると、菖に向かって立ち上がっていた。
「菖、資料持ってきたぁ? 席変わろか、どこ座る?」
「ああ、ええよええよ、千緒そのままで。あたし、前の席!」
 菖は前の机をくるっとこちら側に向けて、僕と篠宮さんのあいだの前に陣取った。
「ほなカリキュラムのやつ、やろか」
 パンパンと手を叩いて座った。
「あ、菖ちょっと待って。菖にも聞いてもらいたいで」
「ん? 何を?」
 やっぱりそうくる、よね。いつもより口をつぐんでしまっている僕のことを、菖が不思議そうに見てくる。おなかが痛い気がしてきた。
「私、夏休みの途中から夏期講習兼ねて、いつもと違う進学塾にも行っとるんよね」
「おめでとうございます」
 机に頭が付くくらい、菖が深々と頭を下げた。笑いたいのに笑えない! そんな菖を無視して、篠宮さんは話を続ける。
「そこに剣崎と同じ中学の、剣崎のファンみたいな女子がおるんやけど……その人ってさ、なんなん?」
 篠宮さんが左隣から僕の顔をじっと見てきた。菖は「ファンおるん? すっげー!」なんて呑気に言っている。
「なんなんって、ど、どういうこと、だろうか」
 歯切れの悪い僕を、今度は菖がじっと見てくる。篠宮さんが溜息をついた。
「なんかね、私がその塾に行く前から嗅ぎ回っとったらしくって。剣崎と、菖のこと」
「あったし?」
 目を大きくして菖が驚いている。内心、僕も叫びたかった。僕だけじゃなく、もう菖のことまで……。
「うちと2組の特進に同じ塾の子おるんやけど、その子んたに訊いとったみたいやわ。剣崎と今、仲がいい女子は誰なんかって。悪気なくさ、美術科の子やよって話してまっとったんやと」
「へえ、なんやろ。ファンっつっても、同じ中学のタメなんやろ?」
 菖は僕に訊いてきた。
「うん、同じ桜ヶ丘中学の同級生。連絡とかは取ってないよ」
「そうなんや」
 即座に応えたのは篠宮さんだった。
「なんかさぁ、その人、あ、真嘉比さんっていうんやけど」
「まかび?」
「うん、真嘉比さん。剣崎と仲が良かったとか……なんか、彼女だか、彼女だった、とか……」
 一瞬にして凍てつくような空気になった。菖の鋭い目が、篠宮さんと僕を交互に見てきた。そして空気を変えたのも菖だった。
「そっか。剣崎ってやっぱり、元カノおったんやね」
 僕は思わず机に両手をついて大きな声をあげた。
「違う‼︎ 付き合ってなんかない‼︎」
 声に驚いた菖は、両手を頭の後ろにやって「そんな興奮せんでも」と静かに言った。
「付き合ってないって、ほんと?」
 篠宮さんが確認するかのように訊いてくる。僕は篠宮さんの目を見て、もう一度言った。
「付き合ってない。本当に」
 ふぅーと長い溜息をついた篠宮さんが、また話し始めた。
「あちらさんは剣崎のこと、忘れられんみたいよ。菖のこと知って、私に菖の写真見せてって言ってきたし」
「見せたの?」
「見せていいよ」
 僕と菖の返事が同時に重なってしまう。
「見せとらんけど、SNS辿られとる可能性はある。……ねぇ、剣崎。これは私の勘やけど。真嘉比さんってめっちゃくちゃ可愛いくせに、やばい女やよね?」
 なんとも言えなかった。
「たぶん、菖も嫌いなタイプやと思う」
「……そういう感じの女子かぁ」
「え、菖って嫌いな子とか、いるの?」
 僕の問いに、菖はケラケラと笑いだした。篠宮さんもつられて、少し笑っている。
「剣崎、おまえな、あたしのことスーパーマンやと思いすぎちゃうか? あたしはおまえの机を汚した奴らも許せへんから大嫌いやし、普通に嫌いやと思う奴もおる。敵も多分、いっぱいおるよ」
 そして僕の目を見つめて言った。
「あたしは剣崎みたいに優しくない。あたしは、剣崎が思っとるほど善人でもなんでもねえよ」
 何も言えなかった。菖は口ではぶっきらぼうでも、みんなと仲良くしようとするタイプなのかと思っていた。でも僕に嫌がらせをしてきた人たちを、今でも許せないと言ってくれて嬉しい。確かに好き嫌い激しそうだね、菖は食べ物の好き嫌いもいっぱいあるもんね。
 それにしても、はっきり言うところや喧嘩腰だから敵がいるんだろうか? 異性や先生の前でぶりっこするような人よりは、菖のほうがいいと僕は思うけど。見てて面白いし。
 篠宮さんが「まぁまぁ」と淀んだ空気を手で払ってくれる。
「菖はね、スクールカーストでわざと優位に立とうとしたり、裏で足を引っ張るようなのが嫌いなんよ」
 それもすごく、よくわかる。菖も篠宮さんの簡潔な説明に、うんうんと頷いていた。菖は喧嘩で人を蹴ろうとしても、蹴落としたりはしない。
 僕とふたりきりのときには恥ずかしくなって変わってしまう姿は、僕だけの特権ってやつかな。
 話の最中なのに僕は思わず頬が緩みそうになり、慌てて両肘をついて下を向きながら頬を支えた。
「勘だから申し訳ないんやけど、真嘉比さんはぶりっこってだけやない気がするんよ。中学んとき、剣崎が本当に付き合っとらんのやったら、言っとることおかしいやん! 付き合っとるとか言っとるんやから! これからなんか起きる、嫌な予感がするんよ」
 篠宮さんが机を小刻みに叩きながら、僕と菖を交互に見た。
「なんかさぁ、まかびって、言いづらくね?」
 菖のすっとんきょうな発言に篠宮さんは思わず立ち上がって、菖の身体を揺さぶった。
「もう! 真剣に考えてよお!」
「いや、考えたとこでよぉわからんし」
 揺さぶりを止めようと菖は篠宮さんと格闘している。
「それに剣崎に何もないんやったら、塾で言わせときゃええやん。家、近いん?」
 止まらない篠宮さんの攻撃を受けながらも、菖は僕を見た。
「家は近くはない、小学校違うし」
「ほら、千緒、大丈夫やって。ストーカーされたら考えよ」
「剣崎アホやからストーカーに気づかへんかもしれんやん!」
 ちょっと待て。聞き捨てならない。菖が篠宮さんの腕を叩きながら爆笑している。
「千緒! 千緒! 剣崎、ここにおるって! アホ言ったらあかん!」
 僕は頬杖をついたまま、ふたりに向けて顔をしかめた。ふたりはさらに爆笑してるけど、僕の心は暗かった。
 そもそもストーカーの話じゃなかったような気がする。篠宮さんの嫌な予感ってのは、菖に対してなんじゃないの?
 篠宮さんも菖の変な落ち着きように焦ってて気づいてない。
 シンちゃんが通っている塾だったらよかったのに。でも探ろうと動くと、悪循環になる気がした。やめよう。
 心は暗いまま、僕はふたりに笑いかけるしかなかった。
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