那須

文字数 563文字

那須
 芭蕉は太平洋側の旅で歌枕を丹念に訪ね歩いている。しかし、この章においては歌枕に触れず、地元の名もない人々と交流し、世の人がいまだ見ぬ花の美を発見することを描いている。『おくのほそ道』にはさまざまな伏線が用意されている。ここは日本海側の旅についての伏線だろう。しかし、この時点でそれは見出されていないので、芭蕉ではなく、曾良が句を詠んでいる。

那須の黒はねと云所に知人あれば是より野越にかゝりて直道をゆかんとす。遥に一村を見かけて行に、雨降日暮る。農夫の家に一夜をかりて、明れば又野中を行。そこに野飼の馬あり。草刈おのこになげきよれば、野夫といへどもさすがに情しらぬには非ず「いかゝすべきや、されども此野は縦横にわかれてうゐうゐ敷旅人の道ふみたがえん、あやしう侍れば、此馬のとゞまる所にて馬を返し給へ」とかし侍ぬ。ちいさき者ふたり馬の跡したひてはしる。独は小姫にて名を「かさね」と云。聞なれぬ名のやさしかりければ、

 かさねとは八重撫子の名成べし
曾良

 那須高原を検索すると、「芭蕉温泉」がヒットする。『おくのほそ道』には、那須での人との交流があるけれども、温泉に関する記述は特にない。そこは、白樺に似たダケカンバなど低木や草木の林の中をセンターラインのない舗装道が通る別荘地である。ストリートビューでは人はあまり見かけない。
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