武隈

文字数 880文字

武隈
 武隈の松は宮城県岩沼市二木の「二木の松史跡公園」にある。周囲は比較的新しい住宅が立ち並んでいる。ストリートビューで公園内を見回してみる。手入れが行き届いた松が2本立ち、大きな庭石がいくつか置いてある。しかし、2本共に細く、例の松は見当たらない。

 歌枕をめぐる旅においてこの章は不易の具体例に触れている。不易は抽象的な概念であり、それが具体的に例示されなければ理解し難い。

武隈の松にこそめ覚る心地はすれ。根は土際より二木にわかれて、昔の姿うしなはずとしらる。先能因法師思ひ出、往昔むつのかみにて下りし人、此木を伐て、名取川の橋杭にせられたる事などあればにや。松は此たび跡もなしとは詠たり。代〃あるは伐、あるひは植継などせしと聞に、今将千歳のかたちとゝのほひて、めでたき松のけしきになん侍し。

武隈の松みせ申せ遅桜と挙白と云ものゝ餞別したりければ、

 桜より松は二木を三月越シ

 「武隈の松」は、能因法師の頃、残念な状態になっている。時の移り変わりの中で形あるものが消え失せたり、変容したりすることはやむを得ない。しかし、「武隈の松」は植え継ぎによってその姿を芭蕉の頃に伝えている。流行の中でも人間の熱意や努力によって継承できるものもある。

 文化庁は、芭蕉の『おくのほそ道』に関連する風致景観の保護を目的として、登場する名所旧蹟を一連の名勝として文化財指定している。第1回目の指定について、2013年11月に開催された国の文化審議会で審議・議決が行われ、「武隈の松」を含む10県13箇所を名勝として指定することを文部科学大臣に答申、翌年3月、「おくのほそ道の風景地」が官報告示される・。

指定地 所在地
草加松原 埼玉県草加市
ガンマンガ淵(慈雲寺境内) 栃木県日光市
八幡宮(那須神社境内) 栃木県大田原市
殺生石 栃木県那須町
黒塚の岩屋 福島県二本
武隈の松 宮城県岩沼市
金鶏山 岩手県西磐井郡平泉町
高館 岩手県西磐井郡平泉町
象潟及び汐越 秋田県にかほ市
親しらず 新潟県糸魚川市
有磯海(女岩) 富山県高岡市
那谷寺境内(奇石) 石川県小松市
大垣船町川湊 岐阜県大垣市

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