那古の浦

文字数 876文字

那古の浦
 「那古の浦」あるいは「奈古の浦」、「奈呉ノ浦」は富山湾の歌枕である。大阪湾を指す場合もあるけれども、この文脈では明らかに富山湾だ。現在の富山県射水市にあるが、コンクリートの護岸にテトラポットが並んでいるだけで、芭蕉の見た風景の名残りはおそらくない。

くろべ四十八が瀬とかや、数しらぬ川をわたりて、那古と云浦に出。擔篭の藤浪は春ならずとも、初秋の哀とふべきものをと人に尋れば、是より五里いそ伝ひして、むかふの山陰にいり、蜑の苫ぶきかすかなれば、蘆の一夜の宿かすものあるまじといひをどされて、かゞの国に入。

 わせの香や分入右は有磯海

 日本海側の旅は歌枕を訪ねるよりも現地の人々との交流が中心である。この章は歌枕を探すことが描かれているが、そこはもはや住む人もいない地域にあると流行が強調されている。現状は歌枕を求めることを断念させるものだ。それよりも前に進む方がよい。歌枕に囚われず、新たな美意識を俳諧は目指すべきだ。

 「那古の浦」は蜃気楼が観測できることでも知られ、2018年6月30日にも広範囲に発生している。高津守記者は同年7月1日 3時00分更新『朝日新聞デジタル』において「12年ぶりにAランクの蜃気楼 魚津で観測」と次のように紹介している。

 魚津埋没林博物館は6月30日、魚津港付近から観測された蜃気楼(しんきろう)が広範囲で長時間続き、肉眼で明瞭に分かる状態で観測されたことから5段階で最高のAランクの蜃気楼(しんきろう)だったと発表した。Aランクが観測されたのは、2006年7月以来、約12年ぶり。
 同館によると、この日は午前7時台からライブカメラで射水市方面に観測され始め、新湊大橋が変形して延びるのが見られた。その後、能登半島から黒部市方面に広がり、午後には富山市や射水市方面の蜃気楼が肉眼でも確認できた。
 同館の佐藤真樹学芸員補は「今日は、よく見られるいつもの気象条件のパターンとは少し違い、なぜこんなに見えたのか正直なところよく分かりません。蜃気楼を作る空気層がどこにあったのか、もう少し分析が必要」と話している。

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