酒田

文字数 531文字

酒田
 出羽の旅路の特徴は地元の人々との交流であり、「酒田」も同様である。それをめぐる詞書は短いが、句は造化を描く崇高なものである。

羽黒を立て、鶴が岡の城下、長山氏重行と云物のふの家にむかへられて、誹諧一巻有。左吉も共に送りぬ。川舟に乗て酒田の湊に下る。淵庵不玉と云医師の許を宿とす。

 あつみ山や吹浦かけて夕すゞみ

 暑き日を海にいれたり最上川

 芭蕉にとって「月」や「日」は造化をしばしば象徴する。「暑き日を海にいれたり最上川」の「日」も海に沈もうとしているのであり、造化を表わしている。移り行くものとしての「日」である。その前の「あつみ山や吹浦かけて夕すゞみ」は「山」=「あつみ」と「風」=「すずみ」という対比が見られるが、この句ではさらに強調される。「暑」=「日」が「冷」=「水」と対比され、昼から夜へ、すなわち熱と光から涼と闇へと世界が移行することが描かれている。造化を雄大な自然の営みとして捉えた句である。

 最上川が日本海に注ぎこむ。ストリートビューでその光景を探す。字下瀬を海に向かって画面を動かすと、酒田港アジングの画像がある。これ以上は進めない。岩場から辺りを見渡す。太陽が反射する水面に光の道ができている。その先に「暑き日」が入っていくのだろう。
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