【7-1】気まずいランチタイム 1

文字数 891文字

 それから二日ほど、雨がつづいた。


 特に用事もないので宿題でも片付けようかと思ったけど、なんかイライラして手につかない。

 結局、国語のプリントを二枚やっただけだった。

 三日目は晴れた。


 お昼過ぎ、おなかがすいたので居間に行ったら誰もいなかった。

 冷蔵庫の中はすぐ食べられそうなものはないし、台所を漁って出てくるのはカップ麺ぐらいで、でもあんま好きな味じゃないからコンビニに買い出しに行くことにした。

うっ

 なんかいた。


 あいつがいた。やさぐれた顔してる。


 コンビニのイートインコーナーに、いた。


 ご丁寧にあの紅茶まで飲んでる。

 マイブームかっつーの。

!!

 あ、こっちに気付いた。

 慌てて目を逸らしてるけどバレてるよ。

 私は自転車を停めると、大股でイートインコーナーに突入した。
ちょっと
なに

 明らかに、避けてる。


 なんなのこいつ。

 チキンなの?


 私より背が15センチもデカいくせに。

 いや、15センチ×2もデカくなったくせに。

こないだのなに、あれ。分かるように説明してよ
……いいよもう。分かんなくったって
もしかして……私になんかやましいことでも、してるわけ?
んなわけ……ないよ

 私は、じいいいっ……とやさぐれ顔を覗き込んだ。

 彼は顔をそむけた。

 なんか、つらそうに見える。

そんなことよりお前、絵、描いてんのかよ
いまそれ関係ないじゃん
あるよ。
どうなんだよ。
なあ

…………描いて、ない
画材買ったのにかよ。
落書きもしてねえのかよ
ぜんぜん。
買ったそのまま。
宿題とかしてた
 彼は腕組みをすると、はぁ、とため息をついた。
やっぱ絵を描きたいんじゃねえんじゃん
そういうわけじゃ
普通、画材買ったらいじりたくなるもんなんだよ。
それを触りもしねえとかあり得ないんだよ。
絵を描きたいヤツってのは
うっさいな。いつ始めたって私の勝手じゃん。口出しすんな
……ならお前も、いろいろ詮索すんのやめろよ
なんでよ。やっぱやましいことなんだ
ちがうっつってんだろ、このデリカシーのかけらもねえ女は!

 彼が店内をちらと見る。

 微妙に視線を集めている我々。

場所、変えないか。
昼まだだろ? ファミレス行こう
いいけど……おごりだかんね
ああ
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登場人物紹介

高校一年生。地元の普通科に通っている。
最近、絵を描こうと思い立った。
あいつのことを弟分だと思っている。
とある銘柄の、ペットボトルの紅茶が好き。

あいつ

の近所に住んでいた幼馴染み。高校一年生。
美術科のある県外の私立高校に進学した。普段は学生寮に住んでいる。
夏休みになり、実家に戻って来た。
なぜか100均に詳しい。

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