【3-1】紅茶のボトル 1

文字数 401文字

 結局私は、画材屋のある街じゃなくて、その手前の駅の、大きめの100均に行って画材を買った。


 たしかに、思っていたよりも本格的なものが揃っていて、私は自分の無知加減を知った。


というか、これ本当に100円で売っていいの?

あいつの言うとおりだったわ……
 帰り道、『お前は絵描きを侮辱してんだよ』という彼の言葉がなんどもなんども頭の中をぐるぐると回っていた。

 彼は本気で絵をやってるのに、遊び半分で手を出そうとした私は、彼を怒らせてしまった。

 これから絵を始めようとした私に、彼は少しでもよかれと思って。


 なのに。

そりゃそっか……

 自分が悪い。

 そんなこと、昔から知ってたはずなのに。

 ――昔から?

 高校生になるまでずっと手を出そうともしなかった私が。


 物心ついた頃から、絵を描く彼をずっと見てるだけだった私が――。

 だから、余計に……怒ったんだ。


 でもそれと画材と、どういう関係なのか。

 まだ、わからない。

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登場人物紹介

高校一年生。地元の普通科に通っている。
最近、絵を描こうと思い立った。
あいつのことを弟分だと思っている。
とある銘柄の、ペットボトルの紅茶が好き。

あいつ

の近所に住んでいた幼馴染み。高校一年生。
美術科のある県外の私立高校に進学した。普段は学生寮に住んでいる。
夏休みになり、実家に戻って来た。
なぜか100均に詳しい。

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