【3-2】紅茶のボトル 2
文字数 865文字
買い物後、少し遠回りをして、彼の家の前を通った。
彼の家はうちから歩いて数分。
うちのある区画の、1ブロック隣だった。
閉め出されてるっていうから、少し心配だった。
子供でもないのに、心配もないけど。
彼は家の玄関先に、庭用のプラスチックのイスを置いて座っていた。
たしか庭の芝生のとこにあったやつだ。
ものすごく気まずい。
……こんなことなら、遠くから見るだけにすりゃよかった。
日陰に置かれたリゾート用のゆったりしたイス。
少しぐったりと腰掛けてる彼の片手には、紅茶のペットボトル。
中身はもう三分の一ぐらいしか残ってない。
――私が好きな銘柄だった。ボトルの形が変わってるからすぐ分かる。
気まずい私は、彼の顔を見ないように言った。
――ウソ。
コーヒーなんて売り切れるわけない。
だいたい歩いて五分ぐらいのとこにコンビニあるんだし。
というか、さっき寄ったけど、コーヒーなんて山ほど売ってたし。
彼は私の荷物を指さして言った。
品揃えを分かってて、ああ言ったんだ。
ちゃんと分かってて。
ひどい奴。
私があやまるスキも与えてはくれない。
彼はけだるそうに、しっしと私を追い払った。
彼の家を出て、すぐ近くの交差点で信号待ちをしていると、彼の両親の乗った車が通り過ぎていった。
おじさんたち、私には気付かなかったみたい。
リアウィンドウ越しに、後部座席に詰め込んだ、たくさんの買い物の荷物が見えた。
車はすぐにウィンカーを出して、家の車庫に入ってった。