【4-1】なくしたものの正体 1
文字数 743文字
ママがドアをノックした音で目が覚めた。
気付いたら、机で寝落ちしてたらしい。
☆ ☆ ☆
ふらふらと日の暮れた外に出た私は、ママから渡された財布をエコバッグに入れ、自転車のハンドルにぶら下げた。
前カゴに入れなかったのは、一応の防犯教育のなせる技で。
さいきんこのへんでも、ひったくりとか増えてるって、町内会の掲示板に貼ってあった。
ママの言う『そこで』とは、つまり昼間寄ったコンビニのこと。
スーパーのほうが幾分安いけど、往復で買い物時間も含めて二十分はかかってしまう。
今晩はそうめんらしいんだけど、もう天ぷらが揚がってるそうで。
麺なんてすぐ茹で上がるから、晩ご飯は実質、私のめんつゆ待ち。
自転車だからすぐ到着。
自転車置き場はほぼ満員状態。なんとかあいてる場所を見つけて、前輪をねじ込む。カギを掛けていると、すぐ隣の自転車から、シャカッと、カギを外した音が。
ふと声を掛けられて、驚いて顔をあげると、目の前にあいつのむっとした顔が。
その距離、15センチ。
それだけ言うと、彼はすっと自転車を引いて、駐輪場から去って行った。
そういえば、あいつ。
カゴにそのままペットボトル入れてた。
あの、紅茶――。