【8-1】パンドラの箱 1
文字数 950文字
ここまできて、聞かずに帰れるかっての。
私はこくりとうなづいた。
彼がぐっと身を乗り出した。
私は、胸がものすごく苦しくなって、なんだかわかんないけど泣きそうになって。
彼の顔が、目の前に来て――15センチもの近くに。
そして、ささやく。
えええ??
ど、どういう、どういうことなのこれ?
妻ってナニ? 一生ってナニ?
こ、告白通り越して、プ、ププ、プロポーズ????
というか、こいつ、そんなこと考えてたわけ!?
あああ……、めまいがしそう。
私はイスからずっこけそうになった。
あきれ顔の彼は、イスに深く腰掛けなおし、組んだ手をテーブルの上に置いた。
忘れ……ようと?
それって……それってぇ……。
あああ……。
涙がちょちょ切れそうになってきた。
彼はほんとにつらそうな顔で言う。
そして、私を指差した。
もう失うものはない、そんな潔ささえ感じる笑みを浮かべながら彼は言った。