【8-3】パンドラの箱 3

文字数 381文字

 彼は、頭がクラクラしている私を連れて、駅ビルのジュエリーショップに入った。

 何が何だかわからないうちに、気付いたら私の指にはリングがはまっていた。

さすが……金持ちのすること、わかんない……
バカ。
目の届かないところに置きっぱなしになるから、首輪をつけたようなもんだ。
それにこれ、小遣いで買えるぐらいだぞ
小遣いのケタ、違うし

 ジルコン入りのシルバーペアリング、一組で15000円するんですけど……。

 よけい頭がクラクラしてきた。

んじゃ、行くか
どこに
どこか。二人っきりになれる場所に
 目の前の婚約者は、満足そうに笑みを浮かべて、私の手を握った。

 二人の距離。

 いまは、0センチメートル。


 そして、これから、何度も何度も、わたしたちは、0センチと数万センチを繰り返していくのだろう。


 だけど不安はない。

 こいつなら、きっとなんとかしてくれる。

 そう、思えるから。

(了)
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登場人物紹介

高校一年生。地元の普通科に通っている。
最近、絵を描こうと思い立った。
あいつのことを弟分だと思っている。
とある銘柄の、ペットボトルの紅茶が好き。

あいつ

の近所に住んでいた幼馴染み。高校一年生。
美術科のある県外の私立高校に進学した。普段は学生寮に住んでいる。
夏休みになり、実家に戻って来た。
なぜか100均に詳しい。

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