【3-3】紅茶のボトル 3

文字数 434文字

 自宅に帰ってシャワーを浴びたあと、私は自分の部屋であの本を眺めた。

 文字通り、外から。

 たしかに分厚い。

 いま自分の部屋にある本の中で、辞典や教科書の次に厚い。


 つまり自分で買った本の中で、一番厚い。


 厚みは15ミリ。表紙も中の紙も上等で、とにかく厚い。

なんだよもう~~~。
一年ちかく会ってないくせに、なんでわかるんだよ……

 私なんて受験にかまけて、あいつのことすっかり忘れてたのに。

 そしたら町からいなくなって。

 あいつがいたことを思い出させられて。

 べつに描きたいものなんかなかったし、美大行きたいとか専学行きたいとかイラストレーターなりたいとかそういうの全くなかったし。

 ただ、あいつと同じようなことをしたかった、だけなのに。

『ここにいない』あいつと同じことを。

ていうかさ。なんであいつアレ飲んでたんだ。
あれ去年の夏に出たやつなのに
 私はちらと、足下のゴミ箱の中を覗いた。
 あの紅茶の、変わった形の空きボトルが、なにもないゴミ箱の底で、ころんと寝転がっていた。
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登場人物紹介

高校一年生。地元の普通科に通っている。
最近、絵を描こうと思い立った。
あいつのことを弟分だと思っている。
とある銘柄の、ペットボトルの紅茶が好き。

あいつ

の近所に住んでいた幼馴染み。高校一年生。
美術科のある県外の私立高校に進学した。普段は学生寮に住んでいる。
夏休みになり、実家に戻って来た。
なぜか100均に詳しい。

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