【4-2】なくしたものの正体 2

文字数 508文字

 めんつゆを買って、なんとなく自転車を押して、だらだら自宅に戻る。

 歩いてるさいちゅう、あの紅茶のことばかり考えてる。

( ――なんで、あれ飲んでるんだろ。)
 すごく気になるけど、だからといって当人に聞くのも気まずい。

 彼のSNSアカウントはなにも知らない。

 携帯番号は知ってるけど、一度も掛けたことがない。

 この町で、地続きの場所でしか、交流したことがなかった。

 いまさら、あいつに直接なにかしらのアクションを、それも、こっちから起こすなんて、……できっこない。
 気付いたら、本当にいま気付いたんだけど、私とあいつの間は、とてつもなく遠くなっていた。

 いつも、すぐ手のとどく距離にいたのに。

 肩が触れあいそうな、そんな距離。

 たぶん、15センチ……くらい。

 そんな距離にいたのに、なんで私は忘れることが出来たんだろう?

。。。
 その答えは、家の前に着いたときに出た。
そっか……。勝手についてくると思ってたから、前しか見てなかったんだ

 いつも自分のことしか考えてなくて。

 視界に入らなくなったことにも気づけなくて。

 いつの間にか彼は遠くの街に行ってしまって。

 ――自分の後ろをついてくる弟分はもう、いなくなっていたんだ。
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登場人物紹介

高校一年生。地元の普通科に通っている。
最近、絵を描こうと思い立った。
あいつのことを弟分だと思っている。
とある銘柄の、ペットボトルの紅茶が好き。

あいつ

の近所に住んでいた幼馴染み。高校一年生。
美術科のある県外の私立高校に進学した。普段は学生寮に住んでいる。
夏休みになり、実家に戻って来た。
なぜか100均に詳しい。

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