【4-2】なくしたものの正体 2
文字数 508文字
めんつゆを買って、なんとなく自転車を押して、だらだら自宅に戻る。
歩いてるさいちゅう、あの紅茶のことばかり考えてる。
すごく気になるけど、だからといって当人に聞くのも気まずい。
彼のSNSアカウントはなにも知らない。
携帯番号は知ってるけど、一度も掛けたことがない。
この町で、地続きの場所でしか、交流したことがなかった。
いまさら、あいつに直接なにかしらのアクションを、それも、こっちから起こすなんて、……できっこない。
気付いたら、本当にいま気付いたんだけど、私とあいつの間は、とてつもなく遠くなっていた。
いつも、すぐ手のとどく距離にいたのに。
肩が触れあいそうな、そんな距離。
たぶん、15センチ……くらい。
そんな距離にいたのに、なんで私は忘れることが出来たんだろう?
。。。
その答えは、家の前に着いたときに出た。
いつも自分のことしか考えてなくて。
視界に入らなくなったことにも気づけなくて。
いつの間にか彼は遠くの街に行ってしまって。
――自分の後ろをついてくる弟分はもう、いなくなっていたんだ。