【6-3】こわかったことと新しい謎 3

文字数 1,006文字

は? 
こっちがなにそれなんですけど。
というかスルーってなに。
だいたいなんで特殊教室しかないそっちの校舎に行く理由あるんですか。
意味わかんないし
え? え? え????

 目が点になってる。

 驚いてるのはこっちもなんですけど!

っていうか、そんなにバカみたく身長伸びられたら分かるもんも分かんないよ
……お前、僕のこと身長で認識してたんか?
 混乱してるのか、なんか挙動不審になってきた。
ちょ、ちょっと、えらいキョドってどうしたの? どういうことか説明してよ
えええええええええ…………
えええ、じゃなくて!
 私は彼の手首を掴んだ。
せ、せ、せつめい……? なんのかな、僕わかんないな
 目がぐるぐるしている。
おかしいよ、さっきっから。脈だってこんなに
ば、やめ、そんなの測るなんてヒドイよ
 彼の顔が真っ赤になって、脈がはやくて、呼吸も荒くて……
もしかして、あんた病気? ちょっと熱測ろうよ
 私が手を引いて家の中につれていこうとすると、全力で抵抗しはじめた。
びょ、病気じゃないからッ。そういうのじゃないから
じゃなに。熱中症?
ちがうし。っていうか手離せよ
 おかしい。なんか涙目になってる。
たのむから、おねがいだから、もうほっといてくれよ
あーやーしーいー。やっぱ病気だよそれ
 彼がぼそりと呟いた。
ある意味……病気、かも。心の
 ……まさか、いじめ? 学生寮で、密室で??
あーもう、マジでほっといてくれ
そ、そんな大変なことになってるかもしれないのに、放置出来るわけないでしょ

 いままでさんざん抵抗してた彼が、ぴたりと動きを止めた。

――ずっと放置してたの、テメエだろが

 聞いたこともないような、腹の底から絞り出すような、低い声。


 私を一瞬、睨み付けて――普通の顔にもどった。


 ゾッとした。

 ほんの一瞬だったけど。

お前、これ以上無責任なマネするなら、金輪際口聞かないぞ
無責任……って?
人の古傷をえぐり出すようなマネ、だよ
 彼は、それだけ言うと、家の中に逃げ込んでいってしまった。
ちょっと! 
どーしたんだよ! 
バカ! 
意味わかんない!
 ったく。……なんだあれ?

 そうこうしてると、大人の時間もそろそろお開きになったらしい。

 ぼちぼち帰るよ、とパパの声がして、みんなで挨拶して解散になった。

 庭を出るときにちらと振り返ると、二階の窓からあいつが見てた。

 でも、私に気付くと、シュッと引っ込んでいった。

 なんだあれ。ホント、なんだあれ。

 ――怖かった。

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登場人物紹介

高校一年生。地元の普通科に通っている。
最近、絵を描こうと思い立った。
あいつのことを弟分だと思っている。
とある銘柄の、ペットボトルの紅茶が好き。

あいつ

の近所に住んでいた幼馴染み。高校一年生。
美術科のある県外の私立高校に進学した。普段は学生寮に住んでいる。
夏休みになり、実家に戻って来た。
なぜか100均に詳しい。

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