【1-3】15センチの再会 3

文字数 510文字

 私たちは、駅前のコーヒーショップに逃げ込んで、お互いの近況報告をした。

 学生寮で暮らしている彼は、夏休みに数ヶ月ぶりの帰省をし、私に轢かれそうになったわけで。そのお詫びにお茶でも奢ろうと。
学校どう? 専門の高校だから授業とか難しい?
べつに。おもしろいよ。同じ趣味の奴も多いし
へー。よかったじゃん
 彼はストローを回し、アイスコーヒーの氷をカラカラと鳴らした。
それなに
本。さっきそこで買った
見りゃわかるよ、本屋の袋に入ってんだもん。中身だよ。めずらしいじゃん、そんな厚くて大きい本なんかお前が買うなんて
失礼な……
 私は買ったばかりの本を袋から出して、テーブルの上に置いた。
私も始めようかなーと思って、絵
んだよ、言ってくれれば、その手の本なんていくらでもうちに……
受験――
終わって、一息ついたから、始めようかと思ったわけで。
そしたらあんたいないし……自分で買うしかないじゃん
そっか、ごめん

 少し陰のある表情で彼は言った。

 だけどこの時はその理由に気付くことはなかった。

それより、丁度よかった
なにが?
明日、あいてる?
イヤな予感しかしないんだが……。

いいよ、あいてるよ。どこいくの?
 彼は苦笑しながら、理由も聞かずに快諾した。
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登場人物紹介

高校一年生。地元の普通科に通っている。
最近、絵を描こうと思い立った。
あいつのことを弟分だと思っている。
とある銘柄の、ペットボトルの紅茶が好き。

あいつ

の近所に住んでいた幼馴染み。高校一年生。
美術科のある県外の私立高校に進学した。普段は学生寮に住んでいる。
夏休みになり、実家に戻って来た。
なぜか100均に詳しい。

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