第24話 最終話

文字数 754文字

☆24



 僕の家族の話をほとんど僕は書いていないが、弟も父も母も、最悪な仕打ちを僕にしたのを僕が忘れているとでも思っているのだろうか。
 だが、それを書くのはまた別の機会に回した方がいいと思われるので、このエッセイでは割愛する。

 僕はいつも黙るしかなかった。間男は、調子に乗っていて、そいつのしでかした多くのことについてなにか言おうとすると、「おれに失礼だぞ! おれに謝れ!」と怒鳴る。日本語としてもはや崩壊している。
 僕が高校二年生から高校三年生に在籍した演劇部では、最終的には県大会で三位だった。二位までが関東演劇祭という高校演劇の最高峰に行けるのだから、惜しいところまで来た。廃部寸前のところを部員探しから始めてそこまで導いたひとりは僕だった。
 大会では僕の高校の演劇部に〈僕へのファンレター〉がたくさん届いた。だが、それは十行に渡って文章があったら九行は僕へのファンレターで、そこに一行、その演劇部への感想、というようなものが大半だったゆえに、僕は演劇部の部員たちから、露骨に仲間はずれにされた。また、これも間男と同じように、「僕にファンレターが届いたよね」と言うと「そんな事実はない!」と、歴史修正する気が十分の人間たちであることが最後に露呈して幕を閉じた。

 僕に、もう未来はないのかもしれない。小説を書き続けるが、今回もずいぶんと書いてはいけないことを書いてしまった。普通の精神を持った出版業の人間だったら、こんな僕はどんな文章を書いてもプロにはさせないだろう。そして、僕と似たようなことを書く僕ではない人間をデビューさせ、そいつがちやほやされるのだ。今までそうだったように、僕のことは認めないだろう、たぶん。……うんざりだ。

 このクソ美しい世界に住むおまえを僕は愛している、だから死んでくれ。



(了)
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