第4話

文字数 2,667文字

☆4



 この文章を書くにあたって、元々あったのは僕が書いた以下の文章がベースで、そこから今回の文章を考えることになった。



 ————よく認知バイアスがかかったひとがいう、日本には子供のポルノ(と言うが実際はイラスト)があふれている、ということへ対しての僕の意見も、少し書いておこうと思う。
まずは僕のツイートを読んでもらおう。

成瀬川るるせ【小説アカウント】
@rulerse
SNSのえっちぃコンテンツの話が僕はわからないんだよな。みなさまが信頼している(?)海外サイトを観ると「あなたはLGBTQですね」って判定を受けるんだ、僕は。普通に女の子大好きな男性なんだが。詳しくは書けないのが残念なのではあるが。
午前6:55 · 2024年6月3日

 TwitterXにさらすわけにはいかなかったので詳しいことは書かなかったが、ここで重要なこととは、僕が「あなたはLGBTQですね」って判定を受ける、ということで、〈それが何故であるか〉を理解すれば話は早い。
 ツイートは圧縮して書いたので意味がわからないだろうし、当たり障りがない程度にゆっくり説明していこう。
 まずは「SNSのえっちぃコンテンツの話」とはなにか。
 要するに論争という名前の、短文での言葉足らずの応酬のことである。
 アニメや漫画の、女の子の絵に過剰反応して「子供のポルノがあふれている」と怒りだして訴訟を起こすひと(だいたい女性)が多い。
 ちなみに、漫画やアニメの絵が街中にあったとき、それをスマホのカメラで撮ると、男性もかなりの確率で「へっ、このオタク野郎が!」とつばを吐くように言ってくるので、別に男女で差があるわけではないのは、SNSでは知られていないことであることを付け加えよう。
 で、これは子供のポルノなのだろうか。
 よく「海外ではこれは子供のポルノだと言われている」という言説が流布されている。
 だが、これは日本のアニメはその国の「文化侵害」で、自国のつくったコンテンツより流行ってしまって大変で、特に〈子供の教育に影響がある〉と言われている、というレイヤーがあることを忘れてはならない。
 教育に悪影響があるというので排除するというアレだ。
 それを踏まえた上で言うと、その〈理由〉のひとつにすることはもちろんあるだろうが、じゃあ、その、欧米のサイトで、ポルノアニメを観るとどうなるか。
 実は、これはサイトの、カテゴリで別枠のページになる。
 具体的にはゲイとかLGBTQの、レインボーマークの付いた、なんとなくSDGsに配慮したページになる。
 僕は男女がえっちぃことをしているタイプのポルノアニメを観ていたはずなのだが……。
 僕は考えた。
 すぐ答えらしきものにたどり着いた、どんなものにか、というと、これは〈ヘンタイ〉(えっちとはヘンタイのイニシャルを取ってえっちと呼ぶ。海外では普通にヘンタイと呼ぶ)という〈特殊性癖〉なのである、ということに、だ。
 大人とか子供とか、それ以前にこれはアニメーションに声優さんがアフレコしたボイスがついているもの、という、〈大枠〉があって、それが〈ヘンタイアニメ〉であり、だいたいこのキャラクターの図像に〈年齢〉を求めるのはそれこそリアルと虚構の区別がわからないひとであるのだ、という海外サイトの〈公式〉=〈運営〉の判断であったのだ。
 冷静に考えて欲しい。
 このアニメーションをつくっているのはだいたいおっさんとおばさん(お兄さんとお姉さん)で、ボイスもおっさんとおばさん(お兄さんとお姉さん)が声を出している。
 若いって言っても役者も職人も、熟練しているということは、義務教育課程の人間ではちょっと出来ないんじゃないか、という予想が立つ。
 おっさんやおばさんが頑張ってみんなで理想のそういうものを具現化させた結晶がその〈アニメーション〉なんだから、完全に〈特殊性癖〉なのが理解出来る。
 かくして、僕はLGBTQという判定を受けたのであった。
 正直、自分が性的マイノリティだと知ったときはショックだった。
 そこからわかるのは、これは漫画やアニメ、であり、生身の人間ではないのである、ということだ。
 たとえ人間だと仮定しても〈中の人〉は、それなりに歳を取った人間がボイスを出しているし、画像もまた、同様にそれなりに歳を取ったひとが描いていて、子供というファクタがない。
〈イラスト〉は〈イラスト〉であるのは海外のサイトが言う通りで、これはLGBTQの方に分類されるマイノリティである。
 実は叩くひとはマイノリティをポリコレ棒でぶん殴ろうとするという、ポリティカルコレクトネスの定義に下手すると反する感じになってしまうという逆説さえ生まれそうである。
 なにはともあれ、クィア理論もそのうち学びたいと思う僕なのであった。

『成瀬川るるせ短編手帖』第92話より抜粋



 ……だいたい、性的マイノリティという言葉を使っても、いまいち〈当事者〉のその発言の〈重さ〉は伝わらないのがほとんどだ。
 僕は小学生のとき、男性に性的に強制的な暴力を受けたことがある。
 それを、おそらくは相手側の男性が吹聴していて、中学生のとき、女子が色めきだって、あげく「あんたこういうの好きでしょ」と言って、男性同士の性的描写の直接表現が含まれた漫画を、学校の机にねじ込んできたことがあった。
 たしかにそのうち耐性が出来て、小説などを中心にボーイズラブ作品を女子にオススメされて読むようになったが、でも、いくらなんでもあんまりな話である。
 具体的には血を吐き出すほど傷ついた。
 当事者が〈特権〉を持って語っている、と言われるかもしれないが、だが、それにしたって性的な被害が女性だけにあるわけではないのは、僕は特にショービズに関わったときなどにたくさん知って、経験して、酷いと思ったわけだが、一般的には「そういう噂があるだけでそれは噂でしかない」というクソみたいな理解が絶対的で、それ故に僕は昔、通っていた病院の世間知らずの医者に「そんなわけないでしょう? 入院しますか」と、誇大妄想のレッテルを貼られるに至るのであった。
 そして同性愛をライトに描いたものがある以上、ライトに考える人間もまた多いのは事実だった。だが付け加えると、ボーイズラブを同人誌で描くときにも不文律の禁忌が存在し、知らないで描くと描いた作者の存在がその業界から抹消されることについては、片足を突っ込んだ僕は知っているが、知る人ぞ知るだけの〈裏コード〉だったことを付け加えよう。これについても、後述するかもしれない。


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