第20話

文字数 896文字

☆20



 二十代後半に知り合った、読者モデルの女の子の話を書こう。ここまで話が長かったが、思い出せるだろうか。
 最初にトップモデルの話をした。二十代前半にトップモデルと知り合いだった。で、その数年後に、読者モデルと出会った。その読者モデルの子、本人が言うには「わたしは一般レベルの読者モデル」である。もちろん、その子はトップの方にいる人々には複雑な感情を抱いている。
 普通に話していてもしょうがないので、カラオケボックスに入って、歌わないで会話することにした。カラオケ屋で働いたこともあるので、阿呆なことはしないしそもそもこのモデル、僕より腕力あるのは明白だったので、すごく丁寧に自分は悪意はない旨を説明して、話を聞き出すことにした。
 面白い話が聞けると思ったのだ。そして、ファミレスじゃ聞けないような話をたくさん聞いた。モデル業界の話だ。
 いや、その子はオタクウェイを当時走っている僕に釘を刺すように言う。
「偶然、一回、表紙を飾ることはあるかもしれない。でも、例えばいつも表紙を飾るのは、通常あり得ない」
 今、僕は複雑な気持ちでこれを書いている。たまにそのいつも躍り出てくるタイプの人間と知り合いだったり、そういう人間が僕を助けてくれることも、人生で何回も、あったのだ。だから、これを記述するのも正直僕自身が「どこサイドの人間でどこ視点で語るべきか」ということについて悩む。「おまえは誰の味方なんだよ? 結局全部裏切るんだな」と思われるかもしれないし、「嘘つきが嘘を吐いてる、誹謗中傷だ! このペテン師!」と糾弾されることもあり得るし、人生生きていくのがつらくなる。僕もどうしていいのかわからない。
 その子は、こう言う。
「なにも〈理由〉がない場合はない」
 と。
「具体的にはさぁ、お偉いさんにはパーティーに必ず呼ばれるわけ。で、必ず呼んだお偉いさんのそばにいるの、そういう娘って」
 それ以上は言わなかったし、それはその言葉以上の意味はないし、それ以下でもない。ただ、その子は見たことを見た通りに述べたに過ぎない。
 だが、僕にもう一度、釘を刺す。
「なにも理由もなく、いつも表紙を飾るのは不可能よ」


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み